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  「宅配需要の急増に対し、人手を介さない配送ニーズが高まる中、低速・小型の自動配送ロボットについて、遠隔監視・操作の公道走行実証を年内、可能な限り早期に実行します」。2020年5月14日、政府の未来投資会議で安倍晋三首相はこう述べた。このことは2020年7月17日に閣議決定した政府の「成長戦略実行計画」にも盛り込まれている。

 これを受けて、自動運転技術開発のZMP(東京・文京)は宅配ロボット「DeliRo(デリロ)」で公道走行の実証実験ができる準備を整える。「宅配業者なども巻き込み、できる限り早くデリロの公道での走行実証実験ができるようにしたい」とZMPの龍健太郎・ロボライフ事業部長は意気込む。

 同社は2017年にデリロの開発に着手した。長さ96.2cm、幅66.4cm、高さ108.9cmと小型で、人が歩く程度の速さで自律走行する。最大積載量50kgの配送ボックスを持つ。送り主はスマートフォンで配送場所や時間を指定し、受け取る側はQRコードを使ってボックスを開錠する。笑顔やウインクなどといった表情を表示したり、声を出して挨拶やお願いをしたりといったコミュニケーション機能も備える。

ZMPは配送ロボット「DeliRo(デリロ)」を使って大学敷地内でコンビニ商品を無人配送する実証実験を実施した
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ZMPは配送ロボット「DeliRo(デリロ)」を使って大学敷地内でコンビニ商品を無人配送する実証実験を実施した
(出所:ZMP、協力:慶応義塾大学湘南藤沢キャンパス、ローソン)

 2019年には慶応義塾大学の湘南藤沢キャンパスの敷地内でコンビニ商品を無人配送するサービスの実証実験や、竹中工務店の本社でエレベーターと連携させた無人配送サービスの実証実験を実施した。「次は公道での実証実験をしたい」と考えていた矢先、新型コロナウイルスの世界的な大流行が起こった。国内外で小型・低速の自動配送ロボットの実用化に向けた動きが一気に加速し、日本では安倍首相が「年内に公道での実証実験を実行する」と明言するまでになった。

新型コロナで非接触・非対面が注目

 ZMPは2001年創業。もともと自動運転技術の開発を手がけ、2018年には日の丸交通(東京・文京)と共同で、東京の大手町と六本木間で自動運転タクシーの実証実験を実施した。同社は自動運転技術とともに小型・低速ロボットの開発にも注力している。2016年には物流現場や製造現場向けに無人運搬機能付きの台車型ロボット「CarriRo(キャリロ)」を発売し、これまで200社以上が導入している。

 「かねて物流業は人手不足という課題に直面しており、キャリロの需要は多かった。そこに新型コロナが直撃し、非接触・非対面で配送作業する必要性が生じたことからキャリロの問い合わせもさらに増えている」(龍部長)