住友ベークライトは国内4工場の生産ラインにIoT(Internet of Things)技術とAI(人工知能)を導入し、生産量を2割向上させた(図1)。1ライン当たり300〜500個ものセンサーを設置し、リアルタイムでの予兆保全と自動制御を実現した。投資額は約10億円。今後も数十億円をかけて、他の製品や海外の工場にも導入していく計画で、これにより世界シェア4割を持つ半導体封止材や、医薬品包装材の競争力向上を図る(図2)。
あらたにIoTとAIを導入したのは、機能性化学製品のバッチ生産ライン*1。従来も1ラインあたり100個ほどのセンサーを設置して生産状況を監視していたが、取得したデータを一元管理できていなかった。集めたデータに基づく判断も人手に頼った属人的なものだったため、十分に活用できていなかったという。人手不足の深刻化に背中を押された形で、熟練技術者の経験に頼らない新たなシステムを構築した。
折しも、システムの完成と新型コロナウイルスの感染拡大が重なり、3密を回避する手段としても役立っている。同社専務執行役員の稲垣昌幸氏は「同時に出勤する社員を最大で従来の半分に減らせた」と胸を張る。