独自に入手した図面と取材を基に、東京・上野動物園にできる新パンダ舎を解説する連載3回目は、一般の観覧者からは見えないバックヤードの工夫を中心に紹介する。
2020年7月に竣工検査を終えてほぼ完成し、パンダの引っ越しを待つばかりとなった新パンダ舎は、繁殖エリアを充実させたことも特徴だ。
パンダは単独で生きる動物なので、普段は1頭で1つの放飼場を使う。雄と雌を同じ放飼場に入れられるのは、通常2~5月の繁殖期のうち、雌の発情がピークに達して交尾が可能になる1~3日間だけだ。飼育員が2頭の様子を注意深く観察して「今だ!」と判断したタイミングで同居させる。タイミングを誤ると、交尾どころか、けんかになりかねない。
雄と雌は同居する前、隣り合った非公開の放飼場で過ごす。互いを隔てる仕切りの一部は、格子状の網にしている。互いの匂いが分かるようにするためだ。匂いはパンダ同士のコミュニケーションで非常に重要となる。
同じく非公開の産室では、パンダが安心して出産できる環境や設備を整えている。いずれシャンシャンの弟や妹がここで生まれるかもしれない。
新パンダ舎には管理・モニター室や調理室の他、パンダの保育室や治療室・検査室、主食の竹を新鮮な状態で保管する竹庫もある。これらは現パンダ舎よりも広い。停電しても大丈夫なように、自家発電装置も備えた。
パンダ舎に求められる機能は、昔と比べて増えている。「現在は動物の福祉などにも配慮している」と東京都建設局東部公園緑地事務所の永田雅之・動物園整備担当課長は話す。