企業がギガビット級の無線ネットワークを独自に構築できるローカル5G。最大のネックは導入コストだ。NECや富士通、エリクソン・ジャパンといったベンダーはローカル5Gの基地局や交換機(コア)の価格を公表していないが、インテグレーターに導入費用を聞くと「構築費を含めて最小構成で1億円弱」(NTTコミュニケーションズ)、「案件によるが数千万円から1億円に届く」(NTT東日本)という。
さらに導入コストの参考になるのが、総務省の「地域課題解決型ローカル5G等の実現に向けた開発実証」だ。ローカル5Gなどを活用した地域課題解決に約37億4000万円の予算を確保し、2020年度に20件程度の実証を予定する。このうちスマート農業の3件は入札公告を終え、それぞれの契約金額は1億9800万円、2億4750万円、2億2880万円とされる。この金額にはシステム構築などの費用も含まれるが、目安にはなる。大企業でなければとても手を出せない水準だ。
汎用サーバーやクラウドの活用で安く
導入コストが高いのには理由がある。まずローカル5Gの構成だ。5Gの構成は4G(LTE)を併用するNSA(ノンスタンドアローン)と、5Gだけで動作するSA(スタンドアローン)の2種類がある。ローカル5Gに割り当てられている28ギガヘルツ帯の周波数は現状、NSAの一択となり、4Gと5Gの両方のネットワークを構築しなければならない。単純に基地局の数が増える。加えて、基地局や交換機の多くは携帯大手向け。専用ハードウエアで処理性能や信頼性などを高めた「キャリアグレード」の製品だ。どうしても高くなる。
だが、総務省が2020年内に予定するローカル5Gの拡充により、この状況は大きく変わりそうである。新たに割り当てを予定する4.5ギガヘルツ帯は、4Gの構築が不要なSA構成で運用できる。電波の直進性が高い28ギガヘルツ帯に比べて設計しやすく、多くのベンダーやインテグレーターが本命と見据える。このタイミングに合わせて各社が新たなソリューションを投入する計画だ。
基地局や交換機も安くなる。富士通は「(現状の導入コストが)一般に数千万円の上のほうとすると、かなり下がった価格を提示できると考えている。逆に価格が低下しなければ広がらないので、何分の1といった水準を目標としている」(神田隆史5G Vertical Service室エグゼディレクター)。具体的には、基地局や交換機を汎用のIAサーバーとソフトウエアで実現することにより、価格を抑える。携帯大手向けの製品は最小構成でも1000ユーザー単位となるが、「10ユーザーのようなスモールスタートで安価に導入できるようにする」(同)。