ローカル5Gは導入コスト以外にも課題が多い。現状は端末の種類が乏しく、大半は実証実験のフェーズにとどまる。無線LANと違い、携帯網ならではの設計や運用の難しさもある。ベンダーやインテグレーターがこれら課題を解消し、いかに導入しやすいソリューションを打ち出せるかがローカル5Gの今後の命運を大きく左右しそうだ。
端末は4.5ギガヘルツ帯のSAに合わせて充実へ
まず端末については、ほとんど選択肢がない。そもそも5Gに対応した端末がまだ少ないことに加え、ローカル5GのNSA(ノンスタンドアローン)構成で利用する28ギガヘルツ帯と2.5ギガヘルツ帯の組み合わせが「世界でも珍しい」(あるベンダー)ためだ。
多くの実証実験で見かけるのは、台湾の仁宝電脳工業(コンパルエレクトロニクス)の評価ボード。台湾や中国の一部メーカーが中継装置やモジュールなどを提供するが、「端末のバリエーションが少ないのが大きな課題」(NTT東日本の野間仁司ビジネス開発本部第三部門IoTサービス推進担当課長)となっている。
ただ、端末の課題は徐々に解消していく見通しだ。4.5ギガヘルツ帯のSA(スタンドアローン)構成が2020年内に利用可能となるのに合わせ、多くのメーカーが対応端末の投入を予定している。業界関係者の間では、NECやシャープ、パナソニックなど国内メーカーの名前も挙がる。一方、28ギガヘルツ帯のSA構成については「対応したチップセットがまだなく、1~2年先のロードマップでも確認できていない」(複数ベンダー)とされ、時間がかかりそうな気配である。
人が通過しただけで切れる?
携帯網の設計や運用も難しい。特に28ギガヘルツ帯は電波の直進性が高く障害物に弱いとされる。基地局のアンテナと端末との間を人が通過するだけでも信号が減衰するため、設計にノウハウが求められる。
これまでの検証によれば「意外にいける」との声もある。NTT東日本が東京大学と共同で設立した検証環境「ローカル5Gオープンラボ」で測定した結果では、基地局のアンテナから複数の壁を隔てるとスループットが落ちたが、縦幅が約20メートル、横幅が約36メートルの建物内で一定の通信速度が出ることを確認できた。「反射板の効果も高く、スループットが2倍になった地点もあった」(野間担当課長)。
NTTコミュニケーションズも「人が遮っただけで切れると言われるが、そうでもない。ビームフォーミング技術で複数ビームを使うと、あるビームが人に遮られても別のビームで反射波をつかむことが期待できる。信号の減衰度合いを見る限りは結構いける」(貞田洋明イノベーションセンター技術戦略部門長)としている。
基地局のアンテナの設置や電波の干渉調整などは携帯大手が得意とする。「24時間体制の監視をはじめ、専門知識を持った無線技術者が保守に駆け付けられる。無線のノウハウを生かせる」(NTTドコモの坪谷寿一5G・IoTビジネス部部長)として支援事業に乗り出す動きもある。