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2020年から関東甲信の1都8県で試行され、21年には全国で運用が始まる「熱中症警戒アラート」。アラート発表の指標となっている「暑さ指数」(WBGT)は、健康・快適な暮らしを考えるうえで欠かせない新たなキーワードだと、前真之・東京大学准教授は言う。暑さの増す日本における「冷房」との付き合い方について、2回に分けて解説する。
冷房をつけると電気代も心配だし… なにより気持ち悪いし… ギリギリまで我慢するのが正解よね?
(イラスト:ナカニシミエ)

 夏の暑い時期でも冷房をギリギリまで我慢する人は、特に高齢者に多い。電気代も心配だが、「不快だから冷房をつけたくない」という人も少なくない。本人が暑さに我慢できる間は冷房をON にしないのが正解なのだろうか。なぜ日本の家では冷房をつけると不快を感じるのだろうか。

日本伝統の夏対策では限界、気温上昇で冷房が必要に

 日本の住宅は「夏を旨とすべし」とされる。暑さへの備えは日射を薄い膜で遮蔽し、昼間の太陽熱をかわす「遮熱」がメイン[図1] 。あとは「通風」と併せ、地熱や水の蒸散などささやかな「冷熱」を活用することで、なんとか夏をしのいできた。

[図1]日本伝統の「夏旨」は日射遮蔽と通風がメイン
開放的なプランと大きな開口で通風し採涼・熱気抜きを行う 深い軒やすだれ・よしずで 日射熱を防ぐ 土間の地冷熱 高床で土壌からの湿度を避ける 屋根・天井の膜の重なりで日射熱を遮り 小屋裏を換気して天井温度を抑制 植栽や打ち水の 蒸散冷却
日本の伝統住宅では、日射熱を遮蔽し、ささやかな自然の冷熱を生かすための工夫が多く施されている。ただし、気温が高くなかった時代には機能したこれらの工夫も、気温が上昇し真夏日や猛暑日が増えている現在の夏には限界がある。もちろん冬の寒さにも極端に弱い(資料:前 真之)
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 こうした工夫は、「日射は強いが気温は高くない」気候においては有効。しかし残念ながら、近年では真夏日(日最高気温30℃以上)や猛暑日(同35℃以上)が急増している。ひとたび気温が高くなってしまっては、日射遮蔽と通風だけでは効果に限界がある[図2] 。室内の空気温度自体を下げる「冷房」を真剣に考えなければならなくなっているのだ。

[図2]気温が高くなると昔ながらの暑さ対策では不十分
上:屋根と天井で日射熱を遮り、小屋裏を換気 下:軒を深くし、簾やよしずを設置
日射遮蔽と通風を中心とした夏の暑さ対策は、「日射は強いが気温は高くない」気候なら有効だった。だが気温自体が上昇してしまった現在の夏には、効果に限界がある(写真・資料:前 真之)
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