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前編 では、暑さの危険度をより総合的に評価できる「暑さ指数」(WBGT)について触れた。では、ひとたび冷房をつけたら、どのような温熱環境が快適なのか。後編では冷房を上手に設計し、健康・快適な環境を確保するためのポイントを、前真之・東京大学准教授が解説する。

 快適な温熱環境について、世界で最もよく知られているのがISO7730だ。夏の冷房は冬の暖房と同様、皮膚の表面温度と発汗量が快適な範囲で「代謝熱量≒放熱量」のバランスが取れること、そして「局所の不快がない」ことの2つを満たすことが重要となる。冬も夏も基本は変わらないが、夏においては「湿度」と「高温の天井」が不快要因になる点がちょっと違う[図1]。

[図1]「体からの適度な放熱」と「局所不快がないこと」が快適性のポイント
夏における快適な温熱環境(ISO7730)
ISO7730における温熱快適性は、冬も夏も基本的に同じ。ただし、夏は湿度の影響と天井の放射不均一が重要になる点が異なる(資料:前 真之)
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人間特有の発汗蒸散は、乾燥環境なら強力な冷却効果あり

 人間の放熱には対流や放射といった「乾性放熱」とは別に、汗などの蒸発による「湿性放熱」がある。特に発汗は人間が備えている最強の冷却機能。人類発祥の地アフリカのような「カラッと暑い」高温・乾燥の気候では、汗がよく乾くので有効に機能する。ただし、「蒸し暑い」高湿の日本では、汗が順調に乾かず冷却効果が限られ、皮膚も湿って不快になりやすい。

 1967年に提案された予測平均温冷感申告(PMV)という総合指標においては、夏の快適な作用温度(≒空気温度と放射温度の平均)は24.5~ 27℃、最も快適なのは26℃だ。

[図2]夏の快適温度は24.5 ~ 27℃、湿度の影響大
PMWと人体放熱量の関係
PMVで夏季の軽装(着衣量0.5clo)、安静(活動量1.0met)、相対湿度70%とした場合、不満者率(PPD)が10%以下となるのは作用温度24.5~27℃。この領域では対流・放射による乾性放熱がメイン。なお、人体放熱量の算出には、SET*の2ノードモデルを用いた(資料:前 真之)
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 [図2]の人体放熱の内訳をみると、作用温度が高いほど発汗による放熱を増やす必要があるが、湿度が高いと蒸散がうまくいかず放熱不足で暑くなる。一方、作用温度が低い環境では対流と放射だけで十分に放熱できるので、湿度の影響は小さくなる。