日最高気温が35℃を超える「猛暑日」が続いても「温暖化懐疑論」は根強いと、前真之・東京大学准教授は指摘する。一方で、環境省は2100年の夏には全国の最高気温が40℃を超えるという「未来の天気予報」も示している。地球温暖化は本当か、またそれは人間のせいなのだろうか。真のエコハウス実現のために欠かせない気象データを読み解こう。
国際連合の「気候変動に関する政府間パネル」、通称 IPCCは、1990年から地球温暖化について各国の専門家による調査研究を続けている[図1]。世界中の研究者が地球の温度予測について真剣な議論を積み上げた結果、既に 2007年の第4次報告書において「温暖化は疑う余地がない」と結論付けた。
さらに 13年度の第5次報告書において、「温暖化は人間活動起源の温室効果ガス排出などによる可能性が極めて高い」と明確に示した。長い時間をかけた世界中の専門家の調査研究と議論を通し、世界の「ファイナルアンサー」は既に出ていることを忘れてはならない。
建築物省エネ法「地域区分見直し」の衝撃
国連の結論は、あくまでも世界規模の話でしょ?と、人ごとに思う人も多いだろう。だが日本の気象データにおいても、温暖化の影響はくっきり表れている。
その証拠の1つが「地域区分の見直し」だ。建築物省エネ法においては、日本を冬の寒さに応じて8つの「地域区分」に分けて、それぞれ達成すべき省エネ性能を定めている。この地域区分が 19年11月、気象データ更新と市町村合併対応のために見直された。その結果、以前より温暖な地域区分に変更された市町村が続出[図2]。温暖化の影響を、改めてまざまざと感じさせる結果となった。
実際の気温はどうなっているのだろうか。日本では 1875年(明治8年)ごろから継続的に、温度などの気象データが各地で計測・記録されている。先人が残してくれた、この貴重なデータを分析してみると、年間で気温が最も低い1月の平均気温は、都市部や寒冷地ではこの100年で約3℃も上昇していることが分かった[図3]。
併せて1日の最低気温が0℃以下となる「冬日」も、各地で年30~60日減と大幅に減少[図4]。特に東京では、かつて年に2カ月程度あった冬日がほぼゼロに。最近は屋外で水が凍らないなという実感は、気象データ上でも裏付けられている。