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 「 2100年には夏の最高気温が40℃超え? 地球温暖化は『リアル』な脅威 」で紹介した通り、夏の暑さは厳しさを増している。前真之・東京大学准教授は、「外皮が高断熱化するほど日射遮蔽を強化する必要がある」と言う。今後の家づくりに欠かせない日射遮蔽の基本について2回に分けて解説する。

(イラスト:ナカニシミエ)
(イラスト:ナカニシミエ)

 夏の日射遮蔽性能については、建築物省エネ法で「冷房期の平均日射熱取得率ηAC(イータエーシー)値」が規定されている。以前の省エネ基準は、床面積当たりの「夏期日射取得係数μ(ミュー)値」で規定していたが、建築物省エネ法では外皮面積当たりのηAC値に変更された[図1]。ただし、日射遮蔽のレベル自体は同じままである。

[図1]ηACの要求性能は約20年前の省エネ基準以下
[図1]η<sub>AC</sub>の要求性能は約20年前の省エネ基準以下
夏期日射遮蔽については、1999年の省エネ基準では床面積ベースの「μ値」の上限が全地域に示されていた。2015年の建築物省エネ法で、外皮面積ベースのηACに変更され、4地域以北では基準値が撤廃された(資料:前 真之)
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 ηAC値は冷房期に外壁に当たった日射熱が室内に侵入する比率をザックリと表した値で、数字が小さいほど日射遮蔽がしっかりしていることになる。

 日射遮蔽するには、カーテンや内ブラインドをはじめ、昔ながらの簾(すだれ)やよしずなど、手軽な後付け手法が数多く存在する。だが、いずれの手法も「図面で確認できない」ために、建築物省エネ法では認められない。いかにもお役所的な理由である。

 ηAC値を下げる最もお手軽な方法は、窓のガラスを全方位一律で「日射遮蔽型」にしてしまうことだが、望ましくない。ガラスの「日射遮蔽型」と「日射取得型」の別は、Low-Eコーティングの箇所によって決まる[図2]。

[図2]Low-Eガラスはコーティング位置で「日射遮蔽型」と「日射取得型」に分かれる
[図2]Low-Eガラスはコーティング位置で「日射遮蔽型」と「日射取得型」に分かれる
Low-Eガラスの日射遮蔽型と日射取得型の差は、主にLow-Eコーティングが屋外側と室内側のどちらにあるかで決定される。さらにコーティングの素材や厚みを工夫している場合もある。南窓は必ず日射取得型とし、他は日射遮蔽型とするのが基本となる(資料:前 真之)
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 日射遮蔽型は、低放射のLow-Eコーティングが屋外側に、日射取得型は室内側に施されている。南窓に日射遮蔽型を用いた場合、夏の強烈な日射をガラスだけで防ぐのは難しく中途半端な日射遮蔽となってしまう一方、冬には日射取得を大きく減らしてしまい、暖房負荷が増大する[図3]。

[図3]日射遮蔽型ガラスは夏は中途半端、冬は増エネに
[図3]日射遮蔽型ガラスは夏は中途半端、冬は増エネに
日射遮蔽型ガラスを使えば机上のηAC値を簡単に下げられるため、安易に採用されがち。しかし、日射遮蔽型ガラス単体では夏の日射遮蔽には力不足であり、他の遮蔽措置との併用が必要になる。また冬には日射取得量が大きく低下してしまうため、熱収支が大幅に悪化する。冬の日射取得が重要となる南面には、日射取得型ガラスの採用が必至である(写真・資料:前 真之)
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 外ブラインドなどの付属部材は開閉できるので実害は少ないが、ガラスは1度決めると季節ごとに変更ができない。南窓のガラスは必ず日射取得型とすることが鉄則であり、ηACの削減は別の手法で達成すべきだ。