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前編では、高断熱化に合わせた日射遮蔽の重要性について触れた。後編では、日射熱を「直達日射」と「天空日射」に分けて考えてみよう。前真之・東京大学准教授は、この2つをしっかり区別して対策する必要があると指摘する。

 より効果的な日射遮蔽を考えるには、日射を2つに分けて考える必要がある。太陽から直接照り付ける「直達日射」と、大気で拡散されて天空の全方位から降り注ぐ「天空日射」である。夏には強烈に照り付ける直達日射が大半のイメージがあるが、実は8月平均では天空日射の方が多い[図1左]。夏は湿度が高く雲も多いので、日射が拡散されやすいのだ。

[図1]夏は天空日射が多く軒・庇では防ぎにくい
[図1]夏は天空日射が多く軒・庇では防ぎにくい
東京の8月で平均を取ると、実は直達よりも天空日射量の方が多い(左)。天空日射は軒・庇では防ぎにくいので、窓面での遮蔽の方が重要になる。晴天日になると直達成分の方が多くなるが、特に問題になるのは短時間に日射が集中する東・西面。太陽高度が低い朝・夕の遮蔽が重要となるので、やはり窓面での遮蔽が重要となる。(資料:新エネルギー・産業技術総合開発機構の日射に関するデータベース(東京平均年)の数値を基に筆者が算出)
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 もちろん、晴天の日には直達日射が卓越する[図1右]。特に、東面・西面には短時間に強烈な直達日射が集中するので、注意が必要。外壁面に当たる日射熱[図2]、室内に侵入する日射熱[図3]をみても、特に太陽高度が低い東・西面に当たる直達日射は、最優先で防ぐ必要があることは明らかだ。

[図2]日射の防御は東・西を最優先すべし
[図2]日射の防御は東・西を最優先すべし
8月上旬の午後3時ごろに撮影した赤外線画像。南面よりも西面に強い日射が当たっていることが分かる。太陽高度が低い時間に日射が当たる東・西面の日射遮蔽を優先するのが基本となる。ただし、南面も太陽高度が低くなる秋には日射遮蔽が必要(写真:前 真之)
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[図3]クルリと回る実験棟で南窓・西窓からの日射を観察
[図3]クルリと回る実験棟で南窓・西窓からの日射を観察
東京大学工学部1号館上の回転する屋上実験棟における、赤外線カメラの映像。左の南向きの場合は、開口部正対時の太陽高度が高いために開口部からそれほど日射が入らない。右の西向きの場合は、午後から強烈な日射が低い角度で部屋奥まで入り込み、温度が急上昇する(写真:前 真之)
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