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在宅勤務が増え、エアコンの稼働時間が増えている住宅は多いはずだ。その多くが、壁掛けの「個別エアコン」ではないだろうか。前真之・東京大学准教授は、暑さが深刻化する夏を健康・快適に過ごすためには、「全館24時間冷房」が現実的だと言う。注目が集まる全館24時間冷房について2回に分けて解説する。

(イラスト:ナカニシミエ)
(イラスト:ナカニシミエ)

 夏の暑さが深刻化する中、夏を健康・快適に過ごすためには、「全館24時間冷房」が現実的である。全館24時間冷房システムはバブル期にも1度はやったが、設置費が非常に高額で電気代も膨大だったため、すぐに下火になった経緯がある。全館24時間冷房は今も選択肢にできないままなのだろうか。

 冷房では、各部屋に壁掛けエアコンを設置してそれぞれを操作する「個別エアコン」冷房が一般的。エアコンは年間約800万台も発売される超メジャー製品のため、値段がこなれていて設置も容易だ。

 だが図1に示すように、長所と短所があり、基本的には在室時のみ冷房する「居室間欠運転」専用の機種である。

[図1]個別エアコンの長所と短所
[図1]個別エアコンの長所と短所
最も一般的な冷房方式は、各部屋にエアコンを1台ずつ設置する「個別エアコン」冷房である。設置が容易で制御性も良く、在室時だけONにして使う「居室間欠運転」には適した機械である。一方で、部屋ごとに設置するのはコストやスペースのムダが大きく、最近の高断熱で日射遮蔽に優れた住宅では住戸全体を常時冷やす「全館24時間冷房」へのニーズが高まっている(資料:前 真之)
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 ところが最近になって、高性能住宅に取り組む事業者を中心に「エアコン1台で全館24時間冷房」にトライした事例が増えている。

 暖房用の「床下エアコン」で冷房すると、重たい冷気が下にたまって足元を冷やすのでおススメできない。

 重たい冷気を住宅全体に回すには、なるべく上方のロフトなどに冷房専用のエアコンを設置し、冷気を下に吹き下ろす[図2]。ただし、冷気は間仕切られた個室や日射不足の窓際には回り込んでくれないので、間仕切りが多く開口部が大きいプランには向かない。

 24時間冷房し続ける前提で空間がつながったオープンプランとし、かつ開口部の日射遮蔽を完璧に設計する必要があるのだ。空間ごとの空調制御が難しい点も注意が必要だ。

[図2]エアコン1台の全館冷房は可能だが制約も
[図2]エアコン1台の全館冷房は可能だが制約も
重たい冷気は下に流れるため、1台のエアコンで全館冷房するには、なるべく上方の天井裏ロフトなどに設置して冷気を床面に吹き下ろすことになる。間仕切りが少なくオープンプランの住宅には有効だが、間仕切られた個室には冷気が届きにくい。冷気が回りにくい窓際は暑く不快になりやすいので、日射遮蔽は完全に行う必要がある(資料:前 真之)
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