前編 では、壁掛けの個別エアコンによる冷房の欠点とともに「全館24時間冷房」の快適性に触れた。後編では実際に全館空調を導入している住宅で計測した独自データを示しながら、最も気になる電気代について前真之・東京大学准教授が解説する。

冷房最大の敵は窓からの日射熱だ。図1に示すように、冷房期の平均日射熱取得率ηAC値が建築物省エネ法ギリギリでは、日射熱だけで日平均1400Wと膨大。冷気が十分に届かない窓際は放射温度が高くなり、不快の原因となる。
日射遮蔽の徹底は省エネだけでなく、快適性の向上のためにも極めて重要だ。全館空調で快適性をしっかりと確保するためには、吹き出し口を暖房と冷房で兼用する方式の場合、季節ごとに吹き出し口の向きを切り替える必要がある[図2]。
暖房の軽い暖気は床に向かって吹き下ろすことで、足元まで暖まる。冷房の冷気は横に吹き出すことで、冷気の降下が穏やかになり温度ムラや気流感が小さくなる。暑くなりやすい窓際まで快適にするためには、窓に冷気が届くように吹き出し口の配置を計画することが肝心なのだ。