企業ネットワークのセキュリティーを確保するための新たな取り組みが急速に浮上してきている。「ゼロトラストネットワーク」だ。「社内ネットワークは安全」という考え方を改め、「どこもインターネットと同じ危険な場所」と考える。アクセスのたびにその正当性を確認するのが基本だ。これを実践すれば、企業システムをインターネットに公開できるようになる。引いてはインターネットにつながってさえいれば、企業外からでも企業システムを利用できるようになる。テレワーク環境の整備にもつながる。こういったメリットのあるゼロトラストネットワークを、技術的な観点から解説する。
出典：日経NETWORK、2020年8月号 pp.20-33 「ゼロトラストネットワーク入門」を改題、編集
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国内企業もゼロトラストネットワークに取り組んでいる。その先駆的な事例を紹介する。具体的には多要素認証とIDによるアクセス制御が中心だ。
ゼロトラストネットワークの先駆者の1社が米Google（グーグル）だ。同社は論文「BeyondCorp」で、新しい企業のセキュリティーモデルとして実現したゼロトラストネットワークの詳細を解説している。内容を読み解いていこう。
ゼロトラストネットワークを実現するには、大きく3つの要素が必要となる。デバイスの状態や利用者などの情報収集、アクセスレベルの決定、アクセスレベルに基づくアクセス制御だ。
これまでの企業ネットワークは、インターネットとLANを中継する場所にファイアウオールを設置し、ここを「境界」として不正な通信が社内に入らないようにしていた。ゼロトラストネットワークではサービスをインターネットに公開し、クラウドに置いた「関所」で個別の通信を検証することで安全を確保する。
