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 避難者の多い場所をデータに基づいて特定する――。熊本赤十字病院(熊本市)は2020年7月4日、後に「令和2年7月豪雨」と名付けられた大雨の中、避難所の生活環境を整備するインフラ支援チームの派遣先を人吉・球磨地区と決定した。人の位置や動きに関する情報である「人流データ」による避難状況の解析結果から、インフラ支援チームの目的地を導き出した。

 ソフトバンクの子会社でスマホから得られる位置情報などを使ったビッグデータ分析を手がけるAgoop(アグープ、東京・渋谷)の解析結果を用いた。「データに基づいた場所の特定は、災害時救援の新しいモデルケースになると考えている」。熊本赤十字病院の曽篠恭裕国際医療救援部救援課長はこう話す。

人の密集度を可視化した画面。令和2年7月豪雨が発生したあとの人吉市周辺のヒートマップ(右)と通常時の人吉市周辺のヒートマップ(左)
人の密集度を可視化した画面。令和2年7月豪雨が発生したあとの人吉市周辺のヒートマップ(右)と通常時の人吉市周辺のヒートマップ(左)
出所:Agoop
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GPSや加速度データで「人流」可視化

 熊本赤十字病院が今回災害時の初期対応における意思決定に活用したのは、Agoop が提供するサービス「Kompreno」(コンプレノ)で可視化して公開した画像だ。Komprenoは最短で3分前のほぼリアルタイムな人の流れや密集度を地図やグラフで可視化する。提携する位置情報をベースにしたスマホアプリを通じて、利用者に同意を得た上で取得したGPS(全地球測位システム)の位置情報やスマホの加速度データを用いる。

 人の位置や動きを把握する場合、携帯電話基地局の情報を用いる手法がある。だが取得できるデータが特定の携帯電話事業者の利用者に限られるデメリットがあった。Agoopの手法はアプリからのデータ取得のため、利用者の使う携帯電話の事業者は問わない。統計処理をして個人を識別できないようにした上で、人の動きや速度を点で可視化したり、ヒートマップでメッシュごとに人の密集度を把握したりする。

 熊本赤十字病院は熊本県の「基幹災害拠点病院」に指定されており、災害発生時に災害対応チームを作る。行政機関や被災現場と調整をしながら指揮をとる病院の本部チームと、現地に調査・救援に向かう医療やインフラ支援の救援チームで情報を連携しながら、被災地での災害対応にあたる。