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 東京海上日動火災保険は人工衛星画像やAI(人工知能)を活用した水災の被害推定を、令和2年7月豪雨の際に本格運用した。広域災害が発生したときに、被害の大きなエリアや浸水高を推定し、損害調査の担当者の配置検討など査定業務を支援する。

 同社は既に2019年に事故連絡や損害査定についてアプリやWebブラウザー経由で遠隔から損害査定できる仕組みを導入していた。これにより「被害状況の把握から保険金支払いまでリモートで完結できる体制が整った」と東京海上日動火災保険の損害サービス業務部の小林秀憲氏は話す。

 人工衛星画像のAI分析やリモート損害査定により、迅速に保険金を支払えるようにする。さらに1軒1軒被害を受けた建物について現地に訪問しなくても、顧客のニーズに応じて遠隔から損害査定をできるようにして、新型コロナウイルス感染拡大を防ぐ体制を整えた。

浸水高をAIで推定して地図上に可視化

 人工衛星画像には、フィンランドの宇宙関連スタートアップのICEYE(アイスアイ)のSAR(合成開口レーダー)を搭載した小型衛星が撮影したSAR衛星画像などを使う。SAR衛星画像は人工衛星からレーダー波を発射して取得するため、夜や曇天でも地表が観測できる。

東京海上日動火災保険が人工衛星画像などをAIで分析して被災状況を可視化したイメージ。令和2年7月豪雨の際の熊本県人吉市の被害を推定した
東京海上日動火災保険が人工衛星画像などをAIで分析して被災状況を可視化したイメージ。令和2年7月豪雨の際の熊本県人吉市の被害を推定した
出所:東京海上日動火災保険
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 東京海上日動火災保険は「自前の衛星を持っている他、人工衛星画像に特化した解析技術を持っている」(小林氏)との理由から、アイスアイの技術を使うと決めた。

 他にも航空画像や事故受け付け、浸水高の情報、土地の等高線データ、災害時にSNS(交流サイト)に投稿された画像などを、クラウド上でAIを使い解析する。

 令和2年7月豪雨における熊本県人吉市の被害推測では、地図上に各地点での浸水高を色分けでプロットして可視化し、支払いの対象になるかならないかの判定に役立てた。具体的には水災時の支払い基準の1つである「地盤面から45センチ以上の浸水」もしくは「床上まで浸水している」に当てはまるかどうかの判断の参考にした。今後は、次のステップである一括の「全損認定」の実用化を目指す。