2020年12月6日、小惑星探査機「はやぶさ2」が地球に帰還します。宇宙航空研究開発機構(JAXA)が14年12月に打ち上げてから6年、長い旅路を経て、探査機が地球に戻ってくるのです。成果物は小惑星Ryugu(リュウグウ)のサンプルを収めたカプセル。その回収ミッションでは、ドローンや人工知能(AI)なども投入される予定です。
18年6月、はやぶさ2は小惑星リュウグウに到着しさまざまな探査を実施しました。中でも注目を集めたのが、衝突装置の銅板(ライナー)をリュウグウの表面に打ち込んで人工クレーターをつくり、そこから噴出したサンプルを採取するといった新たな取り組みでした。
『はやぶさ2、小惑星リュウグウに銅塊打ち込みクレーター生成、新たな探査手法を確立』の記事によると、人工クレーターから噴出した物質を採取することは、宇宙放射線などによる変性、いわゆる「宇宙風化」の影響が小さいサンプルが入手できるという点で重要だとあります。これらのサンプルを別途採取した表面のサンプルと比較すれば、「小惑星という天体が時間推移でどのように変化するかという科学的知見が入手できる」からです。
しかし、このサンプル採取のために行うタッチダウン(着陸)において、プロジェクトチームは大きな壁にぶつかりました。『牙をむいたリュウグウ、はやぶさ2に正念場』の記事によると、18年10月、JAXA宇宙科学研究所(ISAS)「はやぶさ2」プロジェクトチームプロジェクトマネージャの津田雄一氏は、「一度、はやぶさ2プロジェクトは立ち止まろうと思います」と言いました。
同記事によると、岩石にぶつけず、はやぶさ2を安全にタッチダウンさせるための目標地点が、なかなか見つからなかったというのが大きな要因だったそうです。
この困難をどう乗り越えてタッチダウンを成功させたのか。その試練の数々については、日経クロステックの特集記事『世界初のミッションに挑戦、はやぶさ2の軌跡』をご覧ください。
その後はやぶさ2は、地球に帰還してサンプルの入ったカプセルを届けるミッションへと移りました。そして20年12月5日、探査機からカプセルを分離。カプセルは同月6日に大気圏へ突入し、パラシュートで地上に着地する予定です。目標のエリアはオーストラリアのウーメラ地区です。
着地の際には、周辺で待ち構えている回収隊がカプセルから発信されるビーコンなどを頼りに探索して回収するという手だてになっています。
今回は、カプセルの探索にドローンの活用も予定しています。カプセル着地予想エリアを飛行して搭載カメラで撮影。その画像をAIで分析してカプセルを発見するのが狙いです。探索のために用意したヘリコプターが飛行困難になった場合や、ビーコンなどでは発見できなかった場合のバックアップとして対応する方針とのことです。
ここでカプセルの回収ミッションからクイズを出題します。
カプセル回収に向けた探査機の最終誘導フェーズは、20年10月ごろから既に始まっていました。その1つ、目標エリアのウーメラに向けた軌道変更は、同年11月26日、地球から約350万km離れた地点で行われました。それは、化学エンジン(RCS)を使った3回目となる精密軌道制御「TCM-3」で、偏向角0.0085度の軌道修正を実施しました。大気圏突入ターゲットを±10kmの範囲で狙います。
このTCM-3で行われた制御がどれだけ難しいかということについて、JAXAの担当者は「(A)先にいるテントウムシを狙うようなもの」と説明しました。さて、(A)に入る言葉は次のどれでしょうか。
1: 100m
2: 1km
3: 100km