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 2050年までに国内の温暖化ガス排出を実質ゼロとする――。菅義偉首相が掲げた目標に端を発したカーボンニュートラル論争で、自動車業界が大きな注目を集めたのは記憶に新しいところでしょう。電気自動車(EV)という言葉が独り歩きしてしまい、日本自動車工業会が苦言を呈する事態にまで発展しました。技術動向の潮目を読み違えないためにも、自動車業界が直面しているカーボンニュートラル問題と世界の動向を改めて振り返ります。

 「2050年カーボンニュートラル宣言」が飛び出したのは、遡ること20年10月、菅首相の所信表明演説でのことでした。日経エネルギーNextの記事『菅首相、2050年カーボンニュートラル宣言の舞台裏』によると、同宣言は、首相就任後初めての所信表明の目玉として内外にアピールすることを狙ったものだったといいます。

 その後、菅首相の宣言を踏まえて20年12月に取りまとめられた「2050年カーボンニュートラルに伴うグリーン成長戦略」で、カーボンニュートラルが再び注目を集めました。同戦略は経済産業省が中心となった成長戦略会議で議論されたものです。その戦略の中に自動車関連の取り組みとして、「遅くとも2030年代半ばまでに、乗用車新車販売で電動車100%を実現できるよう包括的な措置を講じる。商用車についても、乗用車に準じて2021年夏までに検討を進める」と示されていたことからか、報道でも大きく取り上げられました。

 その際、成長戦略を示した資料には「電動車」に対する説明として、「電気自動車、燃料電池自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド自動車」と注釈が示されていましたが、EVの部分だけが次世代自動車として注目され、エンジンは不要といった誤解が生まれてしまったようです。

 EV一辺倒となったのは、欧州の自動車メーカーの動向も大きく影響していたと考えられます。くしくも20年は、ドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン:VW)、同BMW、同Daimler(ダイムラー)といったメーカーだけでなく、フランスRenault(ルノー)、同Groupe PSA(グループPSA)のPeugeot(プジョー)、欧米Fiat Chrysler Automobiles(フィアット・クライスラー・オートモービルズ、FCA)のFIAT(フィアット)など、さまざまなメーカーが矢継ぎ早にEVを発表しました。

 特にVWはEVに熱心で、ロボットを使ったEVへの給電システムのプロトタイプを、20年12月28日(現地時間)といった年の瀬に発表したほどです。

ドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン:VW)が発表した、モバイル・チャージング・ロボットのプロトタイプ。駐車場などの限られたエリアでの利用を想定。ロボットが自律移動して充電済みの蓄電池を電気自動車(EV)の近くまで運び、充電する仕組み(出所:Volkswagen)
ドイツVolkswagen(フォルクスワーゲン:VW)が発表した、モバイル・チャージング・ロボットのプロトタイプ。駐車場などの限られたエリアでの利用を想定。ロボットが自律移動して充電済みの蓄電池を電気自動車(EV)の近くまで運び、充電する仕組み(出所:Volkswagen)
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 なぜ欧州の自動車メーカーはEVの普及に注力しているのでしょうか。筆者はここに、日本の自動車メーカーにおけるカーボンニュートラルを論じる上での落とし穴があると感じています。長期的な戦略を見ると、欧州勢は単にEVを普及させるだけではなく、周囲を巻き込み欧州独り勝ちの戦略を練っていると考えられるからです。

 それは、環境対策だけでなく、自分たちの産業が今後成長するための絵を描いていると思えるからです。その動向は、日経クロステックが報じた特集『カーボンニュートラル自動車の衝撃』で取り上げていました。

 特集の記事の1つである、『EVからディーゼルへ、欧州水素50兆円構想で狙うアジア封じ』によると、欧州は2030年までに、「水素(H2)エネルギーの普及に50兆円規模の巨費を投じる方針で、アジア企業を利するEV頼みの環境対策を転換する思惑がある」といいます。

 ここで同記事からクイズを出題します。欧州は、16年に発効した温暖化対策の国際枠組み「パリ協定」の実現を目指す上で電池は欠かせないといいます。「EVで使うのにとどまらず、天候などで大きく変動する不安定な再生可能エネルギーの普及に要る」と記事中で指摘しています。

 そこで欧州は、自動車のライフサイクル全体でCO2排出量を評価するLCA(Life Cycle Assessment)規制をつくり、アジア勢に対抗する策を用意しました。同記事ではこの戦略について次のように説明しています。

 「製造時の排出量でEVはエンジン車の2倍近くに達し、その差の大半が電池に起因する。電池の製造工程で大量の電力を使うからだ。一方で発電時の排出量は再生可能エネルギーの普及率次第で、それが低い(A)では、LCAでエンジン車とEVの排出量に大差ないのが実態である。中でも(B)は特に厳しいとされる」

 この(A)と(B)に入る言葉の組み合わせで正しいのはどれでしょうか。

1: (A)アジア (B)中国

2: (A)欧州 (B)ドイツ