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 SUBARU(スバル)が先進運転支援システム(ADAS)を刷新する。「新世代アイサイト」と名付けた改良版の最大の驚きは、中核を担うステレオカメラをはじめとする主要部品を根本的に見直した点だ。これまで20年近くアイサイトの進化を支えてきた日立オートモティブシステムズ(以下、日立オートモティブ)やルネサスエレクトロニクス(以下、ルネサス)の日本勢から、海外の大手部品メーカーに乗り換えた。

 スバルは、2020年末に納車を開始する予定の新型ステーションワゴン「レヴォーグ」から新世代アイサイトの搭載を始める(図1)。新世代品で目指したのは、(1)交差点での衝突など事故を回避できるシチュエーションを増やすことと、(2)高速道路での運転支援の拡大――の2つである。

図1 スバルの新型ステーションワゴン「レヴォーグ」
図1 スバルの新型ステーションワゴン「レヴォーグ」
スバルは2020年8月上旬に、ADASの進化版である「新世代アイサイト」に関する取材会を開いた。(出所:スバル)
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 「もちろん相当悩んだ。それでも、交差点事故への対応と高速道路での高度な運転支援を両立させるためには、ステレオカメラをゼロから見直す必要があった」。初代からアイサイトの開発に携わってきた、スバル先進安全設計部主査の丸山匡氏が打ち明ける。

 スバルが初代のアイサイトを製品化したのは2008年のことだった。「ぶつからないクルマ」の実現に向けて、前方監視用のセンサーとしてステレオカメラを日立オートモティブと二人三脚で開発してきた。カメラで撮影したデータを処理する半導体は、ルネサスなどの日系半導体メーカーが供給してきた。

スウェーデンVeoneerが受注を獲得

 新世代アイサイトに搭載するステレオカメラを供給するのは、スウェーデンVeoneer(ヴィオニア)である(図2)。スウェーデンの大手自動車部品メーカーAutoliv(オートリブ)から分社化した企業で、ドイツDaimler(ダイムラー)などにステレオカメラを供給した実績を持つ。新型ステレオカメラに内蔵する処理半導体は、米Xilinx(ザイリンクス)のFPGA(Field Programmable Gate Array)を選択した。

図2 新世代アイサイトに使うステレオカメラ
図2 新世代アイサイトに使うステレオカメラ
Veoneerが供給する。左右のカメラ間の距離である「基線長」は、日立オートモティブ製の従来品から変えていない。(撮影:日経Automotive)
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 スバルが新世代アイサイトで最も重視したのが、交差点での衝突事故を回避するためにステレオカメラを広角化することだった。従来のステレオカメラから検知距離を維持しつつ、「検知角度を約2倍に拡大した」(丸山氏)という。

 検知角度を2倍にするため、スバルはステレオカメラに搭載するCMOSイメージセンサーの画素数を、これまでの約120万から約230万に増やした。CMOSイメージセンサーを供給するのは米ON Semiconductor(オン・セミコンダクター)である(図3)。

図3 新型ステレオカメラに内蔵するCMOSイメージセンサー
図3 新型ステレオカメラに内蔵するCMOSイメージセンサー
ON Semiconductorの「AR0231」という機種で、画素数は約230万。(撮影:日経Automotive)
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 ステレオカメラを広角化したいというスバルの意向は当然、旧知の日立オートモティブも理解していた。実際、従来品よりも検知距離を延ばしつつ、3倍以上の広角化を実現するステレオカメラを開発したと19年12月に発表済み。それでも失注したのはなぜか。