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 新型コロナウイルスの感染拡大が続くなか、家づくりの現場でも、感染防止対策を踏まえた「新たな現場様式」への模索が始まっている。筆者がこれまで取材を通して付き合いがある地域住宅会社や工務店でも、現場入場時の検温や消毒用アルコールの常備、作業中のマスク着用といった基本的な対策を導入する会社が出てきている。

現場入場者の検温記録。ある工務店の例で、この会社では各現場で毎日、始業時と午後の計2回検温して記録を残している(写真:大菅 力)
現場入場者の検温記録。ある工務店の例で、この会社では各現場で毎日、始業時と午後の計2回検温して記録を残している(写真:大菅 力)
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 「顧客からの要望というよりも、自分たちのリスク対策と、顧客や現場の近隣住民などに対してプロとしての意識の高さを示す狙いもある」。甲信越地方で新築を中心に手掛けるある工務店の支店長A氏は、このように話す。

 リフォーム工事の場合、特に顧客が住みながらのリフォームでは、状況が新築よりもシビアだ。「顧客から徹底した感染防止対策を求められるケースが少なくない。現状では無理もないだろう。顧客に見える形で、こうした対策に取り組んでいる」。首都圏でリフォーム会社を経営するB社長はこのように語る。この会社では検温やマスク着用などに加えて、担当者や職人が現場に入場する際は必ず、消毒用アルコールの全身噴霧も義務付けているという。

マスク着用や長袖の着用を奨励する工務店もあるが、夏場は熱中症リスクも考慮しなければならない。実態として、現場の状況に合わせて作業者1人ひとりの自主管理に任せざるを得ない面もある(写真:大菅 力)
マスク着用や長袖の着用を奨励する工務店もあるが、夏場は熱中症リスクも考慮しなければならない。実態として、現場の状況に合わせて作業者1人ひとりの自主管理に任せざるを得ない面もある(写真:大菅 力)
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 2020年8月中旬の現時点までに感染者の集団発生、いわゆる「クラスター」が生じたケースとして、病院や介護福祉施設、接待やカラオケを伴う飲食店、職場会議などの例が報告されている。建設分野でも、政府が4月7日から5月下旬にかけて発した緊急事態宣言の期間中に大手建設会社複数社の現場で感染例が生じ、死者も出た。しかし、現時点までに大規模なクラスター発生に至ったケースは報道されていない。家づくりの現場に限っても、同様の状況だ。

 しかし、だからといって安心はできない。住宅会社との仕事が多い建設技術コンサルタントのC氏は、次のような懸念を打ち明ける。「コロナ禍以前から建設業は、現場での『労災隠し』がしばしば問題視されてきた。新型コロナウイルスの感染でも、同様の対応を取っている事業者がいないとは言い切れない」。また家づくりの現場には、協力会社を含めて様々な職人や作業者が出入りする。そうした人たちの体調管理は個々に任せるのが基本だ。下請け会社の職人などには「病院嫌い」も珍しくない。多少の体調不良があっても、「健康保険に入っていない」などのために医療機関での診療を敬遠する人もいる。結果として感染の発覚が遅れれば、現場での濃厚接触者が増えることになり、クラスターが生じるリスクは十分にあるといえる。