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 コロナ禍で住宅会社の受注減が顕在化しつつある。「秋以降の現場が全くない」。地域住宅会社や工務店などの中小事業者からこうした声を聞く例が増えた。政府が2020年4月から5月にかけて発した緊急事態宣言を契機に、住宅会社の多くも営業活動が事実上、停止状態になった。秋口以降、着工戸数の実績値も大幅に減少することが確実視されている。

 未曽有の受注減は、住宅建築の現場に浸透している人手不足の緩和につながるか――。住宅会社との仕事が多い建設技術コンサルタントのA氏は、その見方を明快に否定する。「近年、多くの現場で不足してきたのは『安価な仕事でも請け負う職人』だ。適正な水準の金額を示せば、現時点でも確保できる職人はいる」。こうした背景には、住宅建築で近年浸透した工事価格の抑制傾向があるという。

 「1990年代初頭のバブル崩壊以降、元請け会社のコスト抑制が進んだ。並行して、外注先の職人の廃業も増えていった。残ったのは、元請けが示す条件をのめた人たち。その人たちも徐々に減って、『人手不足』の深刻化が指摘されるようになった」(A氏)。主に都市部で“穴”を埋める役割を一定程度、担っていたのが外国人技能実習生だ。しかし労働条件などが劣悪な受け入れ先も少なくなかったことから、既に実習生からも敬遠されがちになっている。そこにコロナ禍の追い打ちで、新規の受け入れができない状況だ。

屋根の化粧スレートを施工する外国人技能実習生。実態として、人手不足の“穴”を補う存在だった(写真:大菅 力)
屋根の化粧スレートを施工する外国人技能実習生。実態として、人手不足の“穴”を補う存在だった(写真:大菅 力)
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 A氏は、「住宅建築現場の人手不足は、低水準を維持し続けてきた工事価格が根本的な原因。現場が減っても解消しない」と主張する。直近では、東京五輪に向けた各種建設プロジェクトの最盛期に、“野丁場”で請負金額の水準が多少上がった。しかし住宅業界では据え置き。「工事価格の抑制傾向が特に顕著だったのはハウスメーカーだ。『人事異動で担当者が変わると外注単価を少し下げる』といった慣例を続けている会社が現在もある。こうした業界体質が変わらないと、受注が減っても人手不足は解消されない」。A氏はこう指摘する。

 事業規模の大きい住宅会社、地域ビルダーでも年間の新築棟数が100棟を超えるような会社の場合は、一定数の職人を抱えて安価な仕事でも引き受ける下請け会社を好む傾向が見受けられる。しかし、そうした下請け会社のなかには、技能レベルが圧倒的に低い職人も目立つという。

 例えばA氏が最近、コンサルティングを手掛けた屋根・外壁の専門工事会社。社長は職人の教育に熱心ではなく、見習いクラスの新規入職者もほったらかし。そもそも社長自身はサイディング工事の職人で、屋根工事は教えられない。A氏は屋根工事の教育役を任されたが、見習い職人のスキルが上達しても、社長は評価してくれない。それどころか、先輩職人がいじめたために、その見習い職人は結局辞めてしまったという。

 「こうした会社では素人のような職人も珍しくない。資材の知識は皆無で、図面も読めない。寸法・材料の『拾い』や段取りもでたらめ。手戻りが日常茶飯事で、現場の他工種に迷惑をかけがち」(A氏)。それでも継続的に仕事を受注できているのは、独特の“営業力”によるところが大きいという。