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 国内で働く16万人を含め世界中の従業員30万人をジョブ型の人事制度へ――。日立製作所が壮大な社内改革に乗り出した。新型コロナウイルスの感染拡大により働き方をテレワーク中心へと刷新するのに伴い、人事制度の抜本的な見直しに挑む格好だ。その狙いを探った。

日立は人事改革に乗り出す
日立は人事改革に乗り出す
(出所:日立製作所)

社員が主役、自らのキャリアを築く

 「能動的に活躍できる人を増やして、会社の成長へとつなげていく」。日立の人事勤労本部でジョブ型人財マネジメント推進プロジェクトを率いる岩田幸大企画グループ長はこう話す。

 ジョブ型の人事制度とは、仕事の内容を細かく決めて達成度合いを見るやり方を指す。プロジェクトマネジャーやデータサイエンティストといった職務ごとに、仕事の内容と必要なスキルなどを「ジョブディスクリプション(職務記述書)」に記し、職務に見合うスキルを持つ社員をアサインする。職種別採用を基本とし、社内異動は公募制とする場合が多い。

 日本で一般的な「メンバーシップ型」は人に仕事を割り当て、組織の一員としての活躍を期待する。職務を限定せずに社員を採用。「営業のエースを開発部門に異動させて、その後に海外経験を積ませる」といった形で会社が主体となり社員のキャリアを考え、育てていく。

 ジョブ型の場合は社員が自らのキャリアを築いていく。主役は社員1人ひとりであり、会社は社員の成長を支援する立場だ。人事評価は個人の能力や行動よりも、職務に基づく達成度や結果を基にすることが多く、テレワークなど離れた場所で働く形態に適しているとされる。

日立の職務記述書は300~400種類

 日立は「ジョブ型人財マネジメント」について次のように説明する。「従業員は自分の目指すキャリアを明確にする。会社は職務や必要なスキルなどを明確にし、その仕事を担える人を、年齢や属性にかかわらず本人の意欲や能力に応じて登用していく」(岩田氏)。能力と意欲に応じた適所適材の配置によって個人と組織のパフォーマンスを高め、生産性向上やイノベーションにつなげる狙いだ。

 日立はグループ会社を含め国内で働く16万人にジョブ型の人事制度を適用する計画だ。それに向けて2020年度内に、ジョブディスクリプションや育成などの仕組みを整える。

 ジョブディスクリプションとは職務の見える化だ。職務ごとにポジション名、ミッションと役割、必要な能力とスキル、必要な資格と経験、リポートラインなどを記載。会社と社員でイメージを共有できるようにする。ジョブディスクリプションはざっと300~400種類ほどになる見込みという。それだけの職務があるというわけだ。

 職務の見える化であるジョブディスクリプションと対になるのが人材の見える化である。日立が「タレントレビュー」と呼ぶ仕組みだ。上長との個別面談、あるいは複数の上長による部下1人ひとりのレビューにより、社員の強みと弱み、キャリア志向を踏まえた育成や職務のアサインについて検討する。これらにより、職務と人材のマッチングを促し、社員のキャリア育成と組織力の強化に結びつける。

 これら以外にも、ジョブ型に関連する制度や仕組みは多岐にわたる。採用施策、配置異動、人材育成、処遇制度、働き方改革、福利厚生などがある。日立は2021年4月からジョブ型人事制度の運用を始め、関連する制度や仕組みについては2024年をターゲットに整備。ジョブ型人財マネジメントの定着を目指す。

 制度の整備以上に大変なのが会社の風土改革や社員の意識改革だ。自らキャリアを考え、ステップアップを目指す方向への行動変容が問われる。「制度と風土意識の両輪で転換が必要だ」(岩田氏)。