KDDIは2020年8月、「ジョブ型」を主体とした新たな人事制度の導入に踏み切った。活躍した人を正当に評価し、処遇に反映することで、全社の生産性向上と業績アップにつなげる狙いだ。デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する人材の育成にも一段と力を入れる。ニューノーマル(新常態)の時代を見据え、全社改革を急ぐKDDIの取り組みに迫る。
若手のニーズに応える
「将来を担う若い社員にとって魅力的で、働きやすい会社にしたい。若い人のためにも、大きくかじを切らねばならないと考えた」。KDDIのコーポレート統括本部人事本部長を務める白岩徹執行役員は人事制度改革の狙いについてこう話す。重要なポジションに昇格するまでに一定の年数がかかる従来の人事制度は、必ずしもウエルカムではないとの意見が若手の中にあったという。
ジョブ型人事の導入に先駆け、KDDIは若手のニーズに応える形で、新卒採用を対象に「WILLコース」を設けている。インフラやデータサイエンスなど、応募者が自身のスキルや専門分野を生かせる分野で働ける制度だ。職種を決めて人をアサインする「ジョブ型」に近い概念といえる。
2020年4月に入社した新卒社員278人のうち、40人がWILLコースを選んだ。2021年度は入社予定の270~280人のうち4割がWILLコースだという。このように、会社の「入り口」に当たる採用については、改革を進めてきていた。
並行して、時間や場所にとらわれず働けるデジタル時代のワークスタイルを検討してきた。そこに新型コロナウイルスの問題が発生。それを1つの契機として、働き方と人事制度の変革を加速すると決めた。
ジョブ型の人事制度については、まず2020年8月以降に入社する中途採用の社員から適用する。新卒は2021年度入社の社員から導入していく。管理職についても2021年度から適用する。それ以外の一般社員は、労働組合との協議を踏まえ導入していく計画だ。
挑戦の行動や意欲も人事評価の対象に
ジョブ型の人事制度とは、仕事の内容を細かく決めて達成度合いを見るやり方を指す。プロジェクトマネジャーやデータサイエンティストといった職務ごとに、仕事の内容と必要なスキルなどを「ジョブディスクリプション(職務記述書)」に記し、職務に見合うスキルを持つ社員をアサインする。職種別採用を基本とし、社内異動は公募制とする場合が多い。
ジョブ型で欠かせないのが、ジョブディスクリプションだ。KDDIはジョブ型の導入に伴い、社内の職務定義を進めていく。これまでも技術系の専門職を中心に30種類ほど定義していた。今後は営業やカスタマーサービスなど全社に広げていく。ミッションと役割を明確にし、社内に公開していく。定義する職務の数は検討中という。
人事評価については、成果に比重を置きながら、挑戦の行動、挑戦の意欲、専門性も評価対象にする。新たに360度評価も取り入れる。上司だけではなく、周囲の評価も参考にすることで正確性を期す。職能や年次による評価はなくす。