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 前回まで記載したように、製造業の製品の付加価値におけるソフトウエアの占める割合が高まっています。ハードウエアで発揮される付加価値だけではなく、ソフトウエアの発展により新たな付加価値が創造されているからです。

 この事象を、(1)ビジネスレイヤーでの動向変化(マクロ目線)、(2)大規模ソフトウエア開発への対応(方法論目線)、の2点に大きく分類して捉え、第2回の記事では、過去に携帯電話産業で起き、これから自動車産業で起こるかもしれない変化、ソフトウエアレイヤーへの付加価値移転と付加価値の提供主体となるための各プレーヤーの作戦について記載しました。

 今回は、(2)の目線で記載します。

大規模ソフトウエア開発への対応

 ソフトウエアで付加価値を発揮、というとシンプルですが、そのためには極めて巨大なソフトウエアが必要となります。そして、巨大なソフトウエアは当然ながら1人では作れず、チームで製作する必要があります。そして、チームで製作するとなった途端に、「どのような機能を作るのか」「何を実現するのか」「各モジュールはどう振るまうべきか」といった構想をどうやって共有すべきか、というところに大変な労力がかかります。言語は何であっても、コードを書いたことがある方ならば想像が付くかと思います。

 筆者自身、もう10年以上前の話ではありますが、手入力コード部のみでMバイトオーダーになる制御ソースコードを泣きながら1人で起こしたことがあります。これは、共同制作のためのコミュニケーションコストを払うより、1人でやってしまった方が早い、という判断もありました。

 しかし、ソフトウエアの大規模化は個人が根性でカバーできるサイズを超えています。自動車は2015年時点でソースコードが150Mバイトを超えたといわれており、さらに昨今の運転支援技術や、高度なHMI(Human Machine Interface)コックピットの発展などの状況を踏まえれば、依然として二次曲線的な増加を遂げ、その勢いは衰えないでしょう。

 こうした言い方をすると「自動車の世界限定の話か」と感じるかもしれませんが、あらゆる製品において影響は出ているといえます。例えば、アナログ技術の固まりであったアンプ&スピーカー。現在のBluetoothスピーカーなどを見れば、増幅して音を出す、という機能もソフトウエア技術の占める割合が大きくなっています。ハードウエア特性も踏まえ、より良く聞こえさせるための各種イコライジングエフェクトや、ライト明滅での演出など、感性的な付加価値が追加されている製品も存在します。

 いずれにせよ、製造業の最終製品に大規模なソフトウエアが求められるという流れは規定のもので、そのためにはチームでの開発が必要になります。

 ここで、チームでのソフトウエア開発の方法論として挙げられるのがウオーターフォールアプローチとアジャイルアプローチです(図1)。

図1 ウオーターフォール開発とアジャイル開発の特徴
図1 ウオーターフォール開発とアジャイル開発の特徴
(出所:アーサー・ディ・リトル・ジャパン)
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