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 R&DのR、つまり研究におけるデジタル活用は、他の業務領域より重要性が低く位置付けられることが多く、話題になることも少ない状況でした。デジタル活用の内容は、主に情報の蓄積・活用で、そのアプローチは情報の分類や標準化による検索精度の向上が中心でした。

 デジタル活用の場面も規定されていないことが多いです。アイデア出し/アイデア膨らまし/アイデア検証/研究企画/研究推進/研究評価など様々な場面で、保管場所の区分けや検索方法といった工夫を行っていました。

 しかし、最近この状況に変化が生じてきました。研究の特定業務に合わせたデジタル活用が行われるようになっています。その背景には、2つの大きな環境変化があります。それらを起点に見ていきましょう。

図1 研究の環境変化
図1 研究の環境変化
(出所:アーサー・ディ・リトル・ジャパン)
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超長期研究テーマに取り組む企業が増加

 1つ目の環境変化は、20~50年後という超長期の未来を創造するための研究テーマに取り組む企業が増加していることです。そのプロセスの例を図2に示します。

図2 超長期研究プロセスの例
図2 超長期研究プロセスの例
(出所:アーサー・ディ・リトル・ジャパン)
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 超長期の未来をターゲットとすると不確実性が著しく高くなります。例として、図2の「未来予測情報」と「変化の兆し情報」から「未来の世界観を創出(デザイン)」するところを取り上げます。ある時点の情報で一旦未来をデザインしてみたものの、しばらくして新たな情報が出てきて、デザインし直したくなることが必ずあります。そのため、常に新しい情報を収集し、定期的にデザインし直し続け、方向修正しながら研究を進めていかなければなりません。このようなローリングを続けるためには、以下のようなことが分からないと大変な手間がかかります。

  • ある「未来予測情報」が変化したときに影響を受ける(デザインし直すべき)「未来世界観」はどれか?
  • ある「未来世界観」が変化したときに影響を受ける「未来の顧客情報」はどれか?
  • ある「未来世界観」が変化したときに影響を受ける「未来の技術情報」はどれか?

 そこで、図3のようなデータ連携を行うことになります。それにより最新情報に応じて再検討しなければならない範囲を簡単に把握することが可能になります。

図3 データ連携イメージ
図3 データ連携イメージ
(出所:アーサー・ディ・リトル・ジャパン)
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 ある企業では、このようなプロセスを1年に1回のペースで5年ほど回しています。しかし、最初はデータ連携を行っておらず、ローリングが大変だったため、データ連携の検討を開始しました。

 以上をまとめると、不確実性の高い超長期研究を行うに当たっては、プロセスごとに情報を蓄積し、情報間の連携を行って、ある情報の根拠となる情報や、ある情報が影響を与える情報をたどれるようにすることで、仮説検証を迅速に回せるようになります。仮説検証の迅速化は、多くの企業がイノベーション推進の参考としているリーンスタートアップにおいても肝になります。これをデジタル活用で実現するのです。