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 今回はR&Dのデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する「ヒト・チーム」に焦点を当てます。R&DのDXのように中・長期にわたり、かつ取り組みの内容が「構想策定」「モデル活動の実施」「仕組みの設計」「展開」「定着化」と変化していく取り組みを進める場合のリーダーには、大きく2つのタイプがあります。完遂型リーダーと引き継ぎ型リーダーです。

[完遂型リーダー]
 完遂型リーダーは、構想策定から成果獲得までのリーダーを1人で担います。オーナーの後ろ盾の下、思いや責任感のあるリーダーが協力者の支援を得ながら進めていきます。典型的な成功パターンの1つであり、数多くの成功事例があります。筆者らも態勢構築やリーダー育成の支援を行っています。リーダーの探索・育成方法のイメージを示します(図1)

図1 リーダーの気質・能力の要素と水準の定義イメージ
図1 リーダーの気質・能力の要素と水準の定義イメージ
(出所:アーサー・ディ・リトル・ジャパン)
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 まず、リーダーの「気質」と「能力」の要素、ならびにそれぞれの要素の水準を定義します。気質は主に先天的に備わっている性質、能力は主に後天的に鍛えられる性質です。探索の際には気質に重きを置き、能力は育成により伸ばします。ただし、明確な定義は難しいため、気質と能力を分けず、探索と育成では重視する要素を中心に選ぶというやり方をする場合もあります。定義した要素と水準を利用して、リーダーの探索や育成の目標設定、現状把握、課題解決を行っていきます。以下に具体例を挙げます。

(1)リーダー候補者を探索する際、好奇心の水準がLevel3以上、観察力の水準がLevel2以上であることを要件とする
(2)リーダー候補者を育成する際、好奇心の水準をLevel3以上に、観察力の水準をLevel3以上にすることを目標とする
(3)観察力の水準をLevel2から3に上げるための教育や経験を提供する

 完遂型リーダーを探索・育成する場合のネックは、リーダーに求められる要件が多岐にわたることです。R&DのDXのリーダーは、ざっと挙げるだけでも「R&D業務」「デジタル」「業務改革」「システム改革」の能力を持つことが望ましいのですが、全ての能力を持つ人材はあまり多くありません。また、能力は気質に比べれば後天的に習得しやすいとしても、「好奇心があり、人が好きで、視野が広く、熱意があり……」という人材は、やはりあまり多くはいません。そのため、自社においてはこのパターンで進めてもうまくいかないと考える企業が存在します。

[引き継ぎ型リーダー]
 引き継ぎ型リーダーのベースとなる考え方を非常に分かりやすく理解できるチャートを日本能率協会コンサルティングの塚松一也氏が作成されているので、ご本人の許可を得て引用します(図2)。なお、以降の説明は筆者が理解した内容のため、文責は筆者にあります。

図2 多様な人のチームワークを意識する
図2 多様な人のチームワークを意識する
(出所:塚松一也氏)
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 完遂型リーダーの探索・育成が難しいと考えている企業でも、以下のような人はいるのではないでしょうか。