製造業のR&Dのデジタル化は、1980年代の図面3次元化に始まり、シミュレーション活用開発MBD(Model Based Development)、要求管理も加えたSEなど、その内容の高度化と対象カバー域の両方で進化が進んでいる。持続可能な開発目標(SDGs)などで製品に対する要求がさらに高度・複雑化する中、デジタル導入をR&Dの仕組み変革・開発の思想改革につなげた企業が効率と品質を向上させている。その一方で、対応が遅れた企業は製品開発を必死のすり合わせ開発にリソースを投入し、デジタル化に取り組めない悪循環となっている。
さらには、自動車業界のCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)に代表されるように、ハードウエア製品においてもUX(ユーザー体験)を大きく左右するソフトウエアの重要度がさらに高まっており、大規模ソフトウエア開発手法であるアジャイル/スクラムの取り組みや、従来開発とマッチングさせたDevOps(開発と運用が密接に連携する手法)など新たな試みも進んでいる。
本連載では、そうしたR&Dのデジタルトランスフォーメーションに関する動向と課題、求められる組織やリーダー像について、さらにアフターコロナのR&Dがどうあるべきかまで、アーサー・ディ・リトル(ADL)の豊富な支援やリサーチ結果を踏まえて共有・提案する。
赤山真一(あかやま・しんいち)
アーサー・ディ・リトル・ジャパン パートナー

大手通信キャリアにおいて、事業企画や新規事業立ち上げに関与した後、アーサー・ディ・リトルに参画。ADLではTIME(Telecom, Information, Media, Electronics)領域の責任者を務める。ICT・エレクトロニクス産業の大手企業を中心に、事業戦略策定・R&D戦略策定などを手掛けた経験を多数保有。近年では、自動車・メディア・交通事業者等におけるデジタル領域の戦略策定を幅広く支援している。
濱田研一(はまだ・けんいち)
アーサー・ディ・リトル・ジャパン プリンシパル

大手自動車メーカーにて電動車の研究開発に従事した後、日系コンサル会社を経て現職。製造業における技術戦略・事業戦略構築や、R&D部門の組織・プロセス改革、技術人材育成等で10年以上コンサルティングに従事。特に自動車産業のR&D分野に関する改革・プロジェクト経験を豊富に有する。近年はCASEを踏まえた技術戦略立案や、特に車載ソフトウエア大規模化に伴う開発や品質保証の体制・プロセス改革などに実績。
勝田昇平(かつた・しょうへい)
アーサー・ディ・リトル・ジャパン マネジャー

大手電機メーカーにて液晶ディスプレー関連の研究開発業務に従事、管理職も経験した後に日系コンサル会社を経て現職。自動車・エレクトロニクス産業の大手メーカーを中心に、事業成長戦略・技術開発戦略構築、R&D部門の組織・プロセス改革、新規事業創出支援などの経験を幅広く保有。近年も自動車OEMにおけるCASEトレンド・開発のデジタライゼーションを踏まえた開発プロセス改革に実績。
新井本昌宏(にいもと・まさひろ)
アーサー・ディ・リトル・ジャパン マネジャー

メーカーにて生産技術、研究開発に従事。その後、複数のコンサルティングファームを経て現職。現在までに、機械、電機、部品、食品、医薬品などの製造業ならびに建設業における新規事業開発、技術戦略策定、研究、開発、設計、生産技術、品質保証、プロダクトデザイン領域の業務改革などのコンサルティングを数多く経験。経営から現場までの一貫性と、事業と技術の整合性を重視し、短期的な成果の獲得と、中長期的に成果を獲得し続ける組織能力向上を同時に支援する。