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 ファイナルシーズンに突入した「第三営業部」。かつて日経ソリューションビジネスに連載され、大好評を博した伝説の小説が日経クロステックでよみがえる。今回はその第27話。詐欺や裏切り、顧客のハラスメント、プロマネの失踪、そしてライバル企業の陰謀などIT業界の厳しい現実の中で奮闘するITベンダーの営業担当者の姿を描く。技術者にも参考になる「提案の極意」がここにある。

 りえぴーと内藤課長代理は城南大学を訪ねました。この大学が、ある企業の情報システム調達案件のコンサルを引き受けたからです。今までにない案件のため2 人は張り切っていますが、内藤課長代理の心には、ある疑念が生じます。一方、火を噴いた大規模プロジェクトの尻拭いを任され、ユーザー企業との信頼関係の改善に奔走する坊津君と猫柳君は、客先で酒を勧められて……。

「おっちゃん! Aランチ2つ、ひとつ大盛りで!」
 冬休みの閑散とした学生食堂のカウンターでオーダーしているのは、りえぴーこと後藤さんです。

「あいよ、お嬢ちゃん。お仕事ご苦労さんだねえ」
「かわいいお嬢ちゃんでしょ。おっちゃん、間違えたからエビもう1本ちょうだい」
「後藤さん、ここは学生さんの……」

「あいよ、オマケだ、エビフライ1本。元気があっていいね! かわいいお嬢ちゃん」
「それで、なんですって? 内藤さん」
「もう、いいよ」
 2人がトレイを持って食堂を歩いていると、やはり場にそぐわないスーツの男性が食事をしていました。

「ああっ! 後藤さんじゃないですか?」
「おーっ、そういうあなたは……誰でしたっけ?」
「僕ですよ。先月、合コンでお話ししたじゃないですか。琵琶通の大橋ですよ」
「あら、そういえば!」

 内藤課長代理が驚いて小声で聞きました。
「琵琶通の社員と合コンしたの? 君」
「そうなんですよ。友人の合コンで、補欠で呼ばれたら相手が琵琶通」
「うーん……それもどうやら城南大学の担当営業!」
 思わず顔を見合わせた2人に大橋さんが聞きました。

「それで後藤さん、なんでこんなところに?」
「えー、あのー、その……」
「後藤さん、キャビンアテンダントじゃなかったっけ」

 大橋さんのきょとんとした顔に、『言うに事欠いてCAだなんて、言うほうも言うほうだけど信じるほうも信じるほうだな、こりゃ。既存のベンダーなのに琵琶通が競合から外された理由が分かる気がするよ』と、そう心でつぶやく内藤課長代理でした。


「わはは、猫柳君。全部飲まなくていいよ、冗談だよ」
 枡酒を前に固まってしまった猫柳君を見て、相好を崩して笑う亀井部長です。「最近はもうコンピュータ会社イジメをやめたからな、せめて猫柳君くらいイジメたくてなあ、わははは。許せよ」

「全く亀井さんもお人が悪い。じゃ、これは3人でいただきましょう」と中田事業部長。
「いやワシも入れて4人で飲もうや、中田さん。御社ともいろいろあったが、カットオーバーまであと少し。固めの杯といこうじゃないか」
 そう言うと、あと3人分の枡を取りに立ち上がった亀井部長でした。

「あの人も変わったもんですね」
「初めて会ったころは、鬼のような形相だったんですが……」
口々にいう坊津君と猫柳君に中田事業部長は言いました。「俺だって、こちらを引き継いだときはどうなるかと思ったよ」
「え、俺に任せておけって言ったじゃないですか」「あ、そうだっけ?」 笑ってとぼける中田事業部長です。


「すみませんね、そろそろ亀井も来るころで」
 時は遡って、ラビット製薬での第2回定例会議のことです。定例会議はラビット製薬側から亀井情報システム部長、経理課長と営業管理課長が出席します。そして、こちらは営業担当の鮫島部長とプロジェクトマネジャーの岩志課長の2人。