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 BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の活用は建設効率化だけでなく、バリューチェーンや都市インフラの変革などの様々な可能性があり、その萌芽(ほうが)も見えつつある。しかし、現状は新たな可能性に取り組むどころか、建設効率化の効果すら獲得しきれていない。本連載では萌芽事例をひもときながらBIMの可能性について提唱したい。今回は、現状を振り返りながら、その先の可能性について展望する。

ゼネコンにおけるBIM活用の現状

 筆者はこれまでに売上高上位の企業を中心にゼネコン20社程度のマネジャー層とBIM活用を含む経営課題に関して議論してきた。その経験からすると一部のBIM導入推進責任者を除いて多くがBIMの導入・活用は投資に対する効果が獲得できていないと認識している。我々はゼネコンの現場まで踏み込んだ支援を行っているが同じ認識である。

 プレスリリースなどを見ると最新技術が次々と導入され、全プロジェクトにBIMを導入している企業もあり、建設業界の外からは華々しく進展しているように見えるが、外向けに良い点が強調されている傾向がある。一部のモデルプロジェクトを除く実態は、確実に効果があるのは干渉チェックくらいで、ひどい場合には全プロジェクトへのBIM導入がルール化されたために仕方なくBIMモデルを作成し、全く活用していないプロジェクトもある〔図1〕。

〔図1〕ある企業でのBIM活用実態
〔図1〕ある企業でのBIM活用実態
(資料:アーサー・ディ・リトル・ジャパン)
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 もちろん一部には前向きな取り組みを進めている企業はある。2社の事例を挙げる。

 1社はスーパーゼネコンA社である。A社はBIMだけでなく建設情報全ての基盤を再構築している。

 BIMの定義は様々であり、進展を妨げている原因にもなっているが、3D形状に属性情報を持たせたものと理解している人は多い。この定義を前提にすると、属性情報としてどの情報を持たせるか検討することは、どの情報を持たせないか、つまり建設情報を俯瞰(ふかん)してより有利な別の方法も考えることである。BIMだけを見ても答えは出ないのだ〔図2〕。

〔図2〕BIM情報と建設情報の関係
〔図2〕BIM情報と建設情報の関係
(資料:アーサー・ディ・リトル・ジャパン)
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 A社では、建設に関わる全ての情報の活用方法を考える取り組みの一部として、BIMの活用を検討している。

 もう1社は準大手ゼネコンB社である。B社ではスーパーゼネコンの華々しいプレスリリースに惑わされることなく、着実に効果を獲得しながら活用範囲を拡大している。スーパーと準大手では投資水準が大きく異なるためである。

 具体例を挙げる。B社では最初のBIM活用の目的を干渉の削減とし、2次元図面を作製する業務はそのまま、干渉のリスクが高い部分のみ並行してBIMモデルを作成している。2次元図面とBIMモデルを並行して作成することには無駄があり、理想はBIMモデルで一気通貫することだが、実現までの道のりが長いためこのような形をとった。本質的な取り組みではないといった批判を防ぎ、関係者の認識を合わせるためステップアッププランを明確にした〔図3〕。

〔図3〕ステップアッププラン事例
〔図3〕ステップアッププラン事例
(資料:アーサー・ディ・リトル・ジャパン)
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 B社の特徴は、1つのステップに対する丁寧さである。教育を行きわたらせ、全プロジェクトに定着して効果を獲得できてから次のステップに進もうとしている。