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 第2回では、BIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の利用シーンが設計領域だけでなく建築後も含むバリューチェーン全体に広がりつつあることを紹介した。第3回では、エネルギー(電力・ガス・熱)領域を対象とし、具体的なユースケースを紹介しながら、BIMの重要性が高まる背景について考察していく。

 グリーンな建築物への関心の高まりや、エネルギーシステムの多様化を背景に、エネルギー領域でもBIMは注目を集め始めている。

事例1 BIMとBEMSを統合する総合機器メーカー

 Schneider Electric(シュナイダーエレクトリック)は、フランスに本社を置く総合機器メーカーであり、エネルギーマネジメントやオートメーションサービスを提供している。彼らはビルの静的データのデータベース (BIM) と、ビルのエネルギーを管理するBEMSや他のビル管理オペレーティングシステムを結ぶことで新たな価値を生んでいる。建設と運用のデータを連結することで、電気設備の適切な設計や管理が行えるというのだ。

 例えばBIMによって正確な建物3Dデータが入手できれば、日照量や顧客用途などを踏まえて適切な照明設備量や配置の設計ができるし、LEEDなどの環境ビルの認証を得るためのシミュレーションもより正確に行えるようになる。また、運用段階においても予備保全のデータを可視化し共有することで、メーカーや施工会社などの関連する企業が効率的に作業できるようになる〔図1〕。

〔図1〕SchneiderのBIM×BEMSの提供価値イメージ
〔図1〕SchneiderのBIM×BEMSの提供価値イメージ
(資料:アーサー・ディ・リトル・ジャパン)
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