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 連載第5回では、都市インフラ・公共財の観点からBIM(ビルディング・インフォメーション・モデリング)の発展可能性について事例を交えて考察をした。第6回は、引き続き都市をフィールドに、サービス・エンターテインメントとBIMの接点を探っていきたい。

エンターテインメント領域に広がるBIMの活用

 これまで、オフィスサービスなどのB to B(企業間取引)領域では、BIMを活用したサービスは既に多数見られてきた。ゼネコン各社によるオフィスでのサービスロボットやVR(仮想現実)を活用した避難シミュレーションなどの取り組みである。

 最近ではBIM活用先がさらに広がり、個人向けのエンターテインメント領域でBIMを活用する例が少しずつ出てきている。観光、ゲーム、都市イベントなどの領域である〔図1〕。まだまだビジネスとしては立ち上がり途上の段階だと思われるが、将来へのポテンシャルを秘めている。本連載では、エンターテインメント領域でのBIM活用の萌芽事例を紹介しながら、サービスの付加価値向上の可能性、新たなサービスが創出される可能性について考察してみる。

〔図1〕観光、ゲーム、都市イベントでもBIM活用
〔図1〕観光、ゲーム、都市イベントでもBIM活用
(資料:アーサー・ディ・リトル・ジャパン)
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事例1 ツーリズムへのBIM活用

 近年、BIMデータを3DCGに変換し、AR(拡張現実)・VRなどのコンテンツとして提供するサービスが出てきている。滋賀県近江八幡市では、昔の安土城をバーチャルに復元する「バーチャルリアリティー安土城プロジェクト」を進めてきた。VRやARを使って、当時の威容をよみがえらせようというものである。現地での体験ツアーではiPadで幻の安土城を眺めることができる。

 もう1つ例を挙げる。「軍艦島デジタルミュージアム」である。長崎市の沖合にある端島は、かつて海底炭鉱によって栄え、その外観から通称「軍艦島」として親しまれてきた。今では上陸ツアーも開設されたが、老朽化が進む建物の内部に入ることは一般人にとっては難しい。立ち入りが難しい軍艦島を、手軽に体感できるのが「軍艦島デジタルミュージアム」である。

 Webサイト上で軍艦島が栄えていた当時の生き生きした360度パノラマ写真を閲覧できる。それだけでなく、軍艦島の日給社宅(16号~20号棟)や30号棟のBIMモデルをダウンロードできるのである。データはBIMx形式でつくられており、iPadでウォークスルーして、いろいろな角度から見ることができるようになっている。バーチャルな体験をすると、ついつい実物も見に行きたくなってしまうものである。昨今のコロナ禍で物理的な移動が制限される中、観光地のPRやバーチャル旅行にBIMが貢献するのである。