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 今回はコロナ禍における人々の生活がFTTHサービス、携帯電話サービス、データセンターのネットワークにどのような影響を与えたのかを考察する。

 まずFTTHサービスを提供しているNTT東日本のトラフィックを見ていく。同社はフレッツ光(コラボ光を含む)のIPoE方式とPPPoE方式を利用したインターネット接続サービスのトラフィックデータを、前週および同年の2月25日週(土日は2月29日および3月1日)と比較する形で公開している。

緊急事態宣言下に最大66%増、お盆休みに73%増も記録

 最もトラフィックが増えているのが平日の日中という点はプロバイダーと似ている。臨時休校が始まりテレワークが増えてから、トラフィックも増加している。緊急事態宣言が出た2020年4月6日の週に33%増となり、緊急事態宣言期間中に最大66%増となった。緊急事態宣言が解除された5月25日週以降は落ち着いて、6月の半ば以降と7月は2月25日週との比較で20%台の増加だった。

 8月に入るとトラフィックは再び急増。お盆期間に当たる8月10日週は2月25日週との比較で73%増となり、最大の伸びとなった。8月の急増要因について同社は、「詳細は不明だが、コロナ禍で自宅におけるインターネットの利用が普段の平日より多かったのではないか」としている。

 ただし1日のピークは夜間である。NTT東日本は、夜間のピークトラフィックを踏まえてネットワークを設計しており、現時点ではネットワーク全体の容量を十分に確保していると説明している。

NTT東日本が提供する「フレッツ光(コラボ光を含む)」のIPoE方式とPPPoE方式を利用したインターネット接続サービスにおける平日昼間のトラフィック。2月25日と比較してどのくらい増加したかを示した。NTT東日本が公開しているデータを基に編集部で作成した
NTT東日本が提供する「フレッツ光(コラボ光を含む)」のIPoE方式とPPPoE方式を利用したインターネット接続サービスにおける平日昼間のトラフィック。2月25日と比較してどのくらい増加したかを示した。NTT東日本が公開しているデータを基に編集部で作成した
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一部のアクセス回線はトラフィックが逼迫する恐れがある

 フレッツのネットワークから先、ユーザー宅へはアクセス回線が伸びている。アクセス回線には複数の種類があり、利用している回線によってはトラフィック面で余裕がない状況になっている可能性がある。例えば「フレッツ光」の集合住宅向けサービスで、集合住宅内でVDSL(Very high bit rate DSL。超高速デジタル加入者線)を使っているケースだ。集合住宅の入り口まで光ファイバーが来ており、そこから各戸まで電話回線を用いてデータを送っている。

 同社のVDSLの伝送速度は最大100Mビット/秒である。余裕があるように見えるかもしれないが、集合住宅まで来ている光ファイバーをサービスに加入している全戸でシェアする点に注意が必要だ。この光ファイバーは速度が1Gビット/秒のものと100Mビット/秒のものの2種類がある。

 特に気を付けるべきは後者だ。100Mビット/秒を複数の家庭で分け合って、さらに各家庭分を家族で分け合う形になる。これで家族全員がWeb会議や動画視聴などで同時にネットを使うと、帯域不足に陥る恐れがある。

 NTT東日本は以前から、集合住宅内の配線がVDSL方式のフレッツ光ユーザーに対して、光配線方式への切り替えを勧めている。上記のトラフィックデータを公開しているWebページでも、改めて光配線方式への切り替えを推奨している。

 アクセス回線は、ユーザーの意向で申し込んだり品目を変更したりする。そのためVDSL方式のユーザーは、自宅で加入しているFTTHの速度が十分かどうかを確認してみるとよい。不足しているか不足気味なら光配線方式への変更を検討すべきだろう。ただし切り替えに伴う配線工事に管理組合の同意が必要な場合があるなど、簡単にいかないこともある。

 集合住宅まで来ている光ファイバーの速度は、「開通のご案内」という書類の「ご利用サービス名」の欄を見ると分かる。「ミニB」「プラン1B」「プラン2B」といった「B」表記がある場合は、100Mビット/秒を集合住宅内でシェアしている。集合住宅内で1Gビット/秒をシェアしている場合は「ミニ」「プラン1」「プラン2」のように「B」表記がない。

 モバイル回線しか使っていないユーザーが、トラフィック増対策としてFTTHといった固定回線を用いた接続サービスに加入している可能性もある。総務省の集計・試算によると、固定ブロードバンド回線1契約、1カ月当たりの通信量は推定で170Gバイト近くに達する。ステイホームや在宅勤務といった動きが進んでいる現在、固定ブロードバンド回線の併用や移行が進んでいたとしてもおかしくはない。

 NTT東日本は、光回線の申込数が伸びているとしている。通常は3月末から4月という時期を過ぎると申込数は落ち着く傾向があるが、2020年は5月と6月も例年ほど落ち着かなかったという。

 NTT東西の光回線を利用した接続サービスを提供しているインターネットイニシアティブ(IIJ)も、新型コロナウイルスの影響が出始めた後加入申込数が増えたとしている。キャンペーンを実施した影響もあるかもしれないが、コロナ禍を機に固定ブロードバンド回線へ変更しようというインセンティブが働いた可能性があるという。