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 経済産業省と東京証券取引所が2020年8月に発表した「デジタルトランスフォーメーション(DX)銘柄 2020」。「日本の先進DX」といえる受賞企業の事例を厳選して取り上げ、DX推進の勘所を探る。

 清涼飲料やアルコール飲料は商品のパッケージデザインで売り上げが大きく左右される。飲料メーカーにとって、消費者が魅力的だと感じるパッケージデザインの作成は商品開発で重要な意味を持つ。

 アサヒグループホールディングスはDXの取り組みの一環として、AI(人工知能)やVR(仮想現実)といった新技術でパッケージデザインの作成を支援しようとしている。同社は2020年4月にAIでパッケージデザイン案を自動生成する「AIクリエーターシステム」の試験運用を開始。続けて同年9月、「VR商品パッケージ開発支援システム」についても試験運用を始めた。

 VR商品パッケージ開発支援システムはコンビニエンスストアのような小売店を想定した仮想の3D空間に、冷蔵ショーケースなどを配置し、パッケージデザインを検討している新商品を自社や競合他社の商品とともに陳列して見栄えなどを確認するもの。社員がVRゴーグルを装着すれば、ショーケースの前に立つ来店客の感覚で商品を閲覧できる。VRゴーグルで閲覧している画像は大型モニターにも投影されるため、チームで一緒に確認できるという。

VRゴーグルの映像を大型ディスプレーで確認する様子
VRゴーグルの映像を大型ディスプレーで確認する様子
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仮想空間に陳列した状態で新商品の見栄えを確認

 「従来、新商品の検討段階で陳列したときの見栄えを確認するのは難しかった」とアサヒグループホールディングスで日本統括本部システム統括部に所属する岡田龍氏は話す。新商品のパッケージデザインがほぼ完成した後で見本缶(試作品)などを作成する必要があったからだ。見本缶の作成には「1点当たり数万円~十数万円かかり、納品まで2~3日待つ必要がある」(同)。しかも小売店の棚などを用意しなければならないうえに、新商品と並べる競合他社の商品を買いそろえる必要もある。そのため、重点商品に絞って実施していたという。

 こうしたコストや時間を、VR商品パッケージ開発支援システムによって大幅に削減する。仮想空間なら商品の3Dデータやパッケージの画像データを基に2~3時間で仮想の見本缶を作成し、陳列した状態でデザインを検討できるという。

 重点商品に限らず新商品に広く適用し、パッケージデザインの作成過程を通じて陳列した状態でのデザインの確認と改善を繰り返す、というプロセス変革を想定している。「パッケージデザインの質と作成スピードが向上する」(アサヒグループホールディングスの古内智文日本統括本部事業企画部Value Creation室シニアマネージャー)という。