
団体名:産業技術総合研究所
原材料:ポリロタキサン、カーボンナノファイバー、カーボンナノチューブ
合成ゴムや熱可塑性エラストマーの「良く伸び縮みする」という特性(ゴム特性)は、熱伝導性や磁性の高さといった機能性とは一般的にトレードオフの関係にある。ゴム特性を持つポリマー(以下、ゴム材料)に機能性を持たせるため無機材料の混ぜ物(フィラー)を加えた複合材料では、フィラー同士が凝集しやすく、ゴムの特性を損ねてしまうからだ。
産業技術総合研究所が開発したゴム複合材料は、母材(ゴム材料)とフィラーの双方に工夫を凝らし、ゴム特性を損なわずに金属並みの高い熱伝導性を持たせた(図1)。発熱する部品を実装するフレキシブル基板のペースプレートなどへの利用を見込める。しかも開発した技術は、熱伝導性以外にも磁性、誘電性などの機能性向上にも役立つとみられる。
2種のカーボンを併用
熱を伝えるために使ったフィラーはカーボンナノファイバー(CNF)と、カーボンナノチューブ(CNT)の2種の炭素材料。このうち、直径が約200nmと相対的に“太い"CNFを主な熱の回路として、ほぼ1方向に配列させた。CNFの間を直径10〜30nmのCNTでつなぎ、熱伝導性を補った(図2)*1。
ゴム特性を持つ母材としてはポリロタキサンを利用。ポリロタキサンは、ドーナツのような環状の分子(αシクロデキストリン)を細長い鎖状の分子(ポリエチレングリコール)が貫通する構造。環状分子が鎖状分子に沿って動き、伸長性と靭性(じんせい)を保持する*2。
このポリロタキサン中で、CNFの凝集を防いで分散させ、しかもポリロタキサンとCNFの接続性を高める工夫を加えた。これにより、ポリロタキサンのゴム特性を低下させずに熱伝導率を大きく向上させた(図3)。