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事例10 超制振

企業名:アドバンスコンポジット
原材料:セラミックス、アルミニウム合金

 アドバンスコンポジット(静岡県富士市)が開発した「AC-Albolon(アルボロン)」は、アルミニウム(Al)合金並みの軽さで鋳鉄と同等の強度を持つ材料だ。実体は、Al合金とセラミックスの複合材。鋳型の中にセラミックスの多孔質体を固定した状態で溶融したAl合金を流し込み、高圧をかけて含浸・凝固させる「溶湯鍛造法」で製造する。同社は顧客の要望に応じて溶湯鍛造法による複合材料を開発・製造する事業を営んでいる。

強くて軽くて、加工性が高い

 アルボロンの開発を始めたのは5年ほど前。顧客に試験評価してもらうなどの助走期間を経て、2年前からアルボロン製の部品を有償で顧客に提供し始めた。同社技術開発部長の佐々木英人氏は、「引き合いが多いのは、パワーコントロールユニット(PCU)の基盤のリフロー*1はんだ付けで使う治具。半導体チップを正確に位置決めするのに有効だと評価を得ている」と話す(図1)。実際の生産ラインで使われ始めているという。

*1 リフロー
ペースト状のはんだを印刷したプリント基板の上に電子部品を固定し、リフロー炉に送って赤外線や熱風などではんだを溶かして接合する手法。
図1 アルボロン製のリフロー治具
図1 アルボロン製のリフロー治具
アルボロンは、アルミニウム合金をセラミックスの多孔質に含浸させた複合材。アルミニウム合金と同等の密度で鋳鉄並みの強度を持つ。表面に細かい切削加工ができる点も特徴だ。(出所:アドバンスコンポジット)
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 アルボロンの密度は2.8g/cm3で引っ張り強さは290MPa。先述した通りAl合金と同程度、鋳鉄の3分の1程度の軽さで鋳鉄並みの強度を持つ。さらに熱膨張率が12ppm/KとAl合金の半分程度で、熱が加わっても変形しにくい()。

表 アルボロンと鋳鉄、アルミの特性比較
(出所:アドバンスコンポジット)
表 アルボロンと鋳鉄、アルミの特性比較
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 また、強化材となるセラミックスの材質と構造の工夫で、金属と同様に表面に細かい切削加工ができる*2。半導体チップを位置決めして正確にはんだ付けしなくてはならないリフロー治具の表面には、精細な切削加工が求められるのでこの加工性の高さが生きてくる。「強くて軽くて、加工性が高い」点が評価され、リフロー治具の材料としての引き合いが多いというわけだ。

*2 特許申請中なので詳細は公開していない。なお、アルボロンはワイヤー放電加工も可能だ。

 佐々木氏は、「平面上を高速で動き、高速で止まる必要がある部品での採用例が多い」と言う。具体的にはワイヤーボンディングマシン*3のテーブルや、エアコンのスクロールコンプレッサー*4の可動スクロールなどだ(図2)。

*3 ワイヤボンディングマシン
半導体チップの電極と基板の電極の間などを、金や銅といった素材のワイヤーで接続する装置。
*4 スクロールコンプレッサー
一対のうず巻き形をした固定スクロールと可動スクロールとで構成し、シャフトを回転して2つのスクロールで仕切られる空間の容積を変化させ、流体を吸入・圧縮するコンプレッサー。
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図2 アルボロン製の部品
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図2 アルボロン製の部品
ワイヤボンディングマシンのテーブル(a)とスクロールコンプレッサーの可動スクロール(b)。高速で動く部品を鋳鉄で造ると、慣性重量の影響が出やすい。アルボロンは密度が鋳鉄の3分の1なので、動かす時のモーターの負担が相対的に小さく、止める際の応答性も高い。(出所:アドバンスコンポジット)