全1553文字
PR

 「(新型コロナウイルスへの対応の過程で)医療分野のICT(情報通信技術)化の遅れがはっきりと分かり、今後の大きな課題として残った」――。医師でインテグリティ・ヘルスケア(東京・中央)の代表取締役会長を務める武藤真祐氏は、日経クロステックと日経メディカルが開催したオンラインワークショップ(2020年9月2日開催)に登壇し、医療分野におけるDX(デジタルトランスフォーメーション)推進の重要性を説いた。

 武藤氏が医療分野のICT化の遅れの例として指摘したのが、新型コロナウイルス感染症対策のために開発したシステムを十分に活用できなかった点である。病院の病床などの情報を把握する「G-MIS」や新型コロナウイルス感染者がどこにいるか把握する「HER-SYS」などのシステムを政府が開発したものの、速やかに導入できなかった自治体もあったという。

講演する武藤真祐氏
講演する武藤真祐氏
(出所:日経クロステック)
[画像のクリックで拡大表示]

 武藤氏は在宅医療を手掛ける鉄祐会祐ホームクリニックで理事長を務めている。コロナ禍でニーズが高まったという在宅医療の分野において同氏は、ICT化による効果が期待できる項目として、データ収集、コミュニケーション、治療を挙げた。このうちデータ収集について、ePRO(Electric Patient Reported Outcome、電子患者日記)と呼ばれるシステムの活用が重要になるとした。

 ePROは医師の診察を受けている患者が、病状の変化や日常的に感じる問題点などを自ら記入するシステム。医師による診察だけでは得られない患者の主観的な情報を収集できるため、「患者と医療従事者の接点がリモートになればなるほど、ePROやウエアラブル端末のような日常的な情報を医療に生かしていく仕組みが広がっていくのではないか」(武藤氏)と期待を示した。

 ePROを活用することで、患者の日常的な情報から生活の質(QOL)を評価し、治療に反映できるようになる。この他に、新薬の開発につながる治験などの臨床研究に患者の日常的なデータを活用する検討が進んでいる。