東京都医師会が主導して構築している患者情報の共有ネットワーク「東京総合医療ネットワーク」を利用する病院が増えている。都内12病院で準備が整ったほか、今後は関東の他県との連携も検討中だ。連携する医療情報システムは、富士通の「HumanBridge」と、NECとエスイーシー(SEC)の「ID-Link」の他に、ソフトウェア・サービスの「CareMill」、SBS情報システムの「PrimeArch」も加わる。
2020年9月15日に日経クロステックと日経メディカルが開催したオンラインワークショップ「医療はDXでどう変わるか?」に登壇した東京都医師会理事の目々澤肇・目々澤醫院院長は、「人を必要な医療につなげるために、医療情報連携は必要だ」と強調した。
異なるベンダー間の電子カルテも連携
東京総合医療ネットワークは、異なるベンダーの電子カルテを利用している医療機関同士でも、相互にカルテ情報を閲覧できるようにするシステムで、2018年に運用を開始した。これまでに都内12病院で連携の準備が完了している。閲覧できる情報は、入院情報、病名、アレルギー情報、処方オーダー、注射オーダー、検体検査結果などを予定している。
地域の医療機関の電子カルテをつなぐ連携システムは全国各地で導入されているが、その多くがHumanBridgeとID-Linkで「富士通とNECの2社のほぼ独占状態」(目々澤氏)。実際、2014年度に東京都医師会で行った調査では、都内の500床以上の大病院では8割がHumanBridgeかID-Linkを利用していた。
そこで、これらのネットワーク同士の連携が必要として、東京総合医療ネットワークでは、当初はHumanBridgeとID-Linkの連携から始めた。「HumanBridgeとID-LinkのサーバーはもともとNTTデータの専用回線で物理的につながっていたため、これを生かそうとなった」と目々澤氏は振り返る。
事業開始後は年間で2000万円ほど東京都の支援を受けていたが、他は参加利用機関からの会費で運営している。ネットワークの有効活用に向けて、各医療機関の医療連携担当者による意見交換会も開催しているという。