新型コロナウイルスの感染拡大により、消費者の買い物行動は制約を余儀なくされた。店舗での買い物では店員や他の顧客と接触、接近しないように注意を払い、長時間の店舗滞在も避けなければならない。店舗側にとっては、そうした制約を前提に顧客に最大限のサービスを提供することが求められる。
ホームセンター大手のカインズは、2019年から力を注ぐデジタル変革を通じて、店舗や顧客の買い物体験の改革を急ぐ。初の中期経営計画では3年間で最大150億円をデジタルに投資すると表明。デジタル人材を一堂に集めた新組織も立ち上げ、新システムや新サービスの開発における「脱ベンダー依存」を急ピッチで進めている。新たなホームセンター像を目指して進める、怒濤(どとう)のデジタル攻勢といえる。この取り組みが、新型コロナ禍での顧客サービスの向上にもつながっている。
デジタル変革の成果の1つが、ホームセンターの顧客向けに提供する取り置きサービス「CAINZ PickUp(カインズピックアップ)」だ。カインズのEC(電子商取引)サイトやスマートフォン向けアプリで事前に商品を注文して、店舗の取り置き専用ロッカーやサービスカウンターで商品を受け取れる。新型コロナ禍で店舗での買い物が制約されるなか、店舗滞在時間を短くできるサービスは顧客から高い評価を得ている。
徹底した内製化で迅速な開発を可能に
こうしたサービスを迅速に開発する基盤となるのが、IT組織の徹底した「内製化」である。アジャイルによるシステム開発を担う組織体制も特徴的だ。ビジネス側のニーズに即応できる体制を整えている。
日経クロステック EXPO 2020では、カインズの池照直樹デジタル戦略本部本部長が、「IT小売業に生まれ変わる」と宣言してデジタル変革にまい進する同社の取り組みを詳しく解説する。デジタル化を進める上での組織づくりや実践についても語ってもらう予定である。自社でどのようにDXを進めればよいのか悩んでいる人にとって、大いに参考になるはずだ。