新型コロナウイルスの感染拡大が、日本に残された数少ない成長産業の1つとして期待されているスポーツビジネス、特にプロを中心としたスポーツ興行の根幹を大きく揺さぶっている。プロスポーツのビジネスモデルの基本は、スタジアムやアリーナに多くの観客を集め、チケットや飲食、グッズで収益を上げることだ。観客数の多寡は人気度を示し、それが重要な収益源である放映権料にも大きく影響する。
ところが、スポーツの熱狂と興奮という独自の雰囲気を生み出す数万人の観客で埋まったスタジアム・アリーナは、新型コロナの観点では「3密」の温床になりかねない。このため、東京オリンピック・パラリンピックをはじめ、これまでに多くの大型スポーツイベントが延期や中止を余儀なくされてきた。プロスポーツの興行も無観客や観客数が制限された状態での開催となっており、国内では9月19日以降、プロ野球やJリーグの試合で、それまでの上限5000人の制限が撤廃され、最大で収容人数の50%に緩和されている。とはいえ、プロスポーツリーグやチームとって、当面、大きな売り上げの減少は覚悟せざるを得ない状況だ。皮肉にも、集客に成功していた人気チームほど痛手が大きい。
これは確かに大ピンチではあるが、裏を返せばリアルの集客に大きく依存していたビジネスモデルを変革する絶好の機会とも言える。そこで注目されているのが「無観客テック」だ。試合をリアルタイムでVR(仮想現実)配信したり、スタジアムに設置したアバターロボットを介して観戦したりするなど、テクノロジーの導入によってスタジアム・アリーナに行かなくても試合が見られるサービスである。
例えば、北海道日本ハムファイターズがアバターロボットを活用したリモート観戦席「Future Box Seatβ」の実証実験をしたり、横浜DeNAベイスターズがバーチャル空間上に横浜スタジアムの一部を構築してスマートフォンやPC、VRデバイスで観戦できる「バーチャルハマスタ」の無料トライアルを実施している。またJリーグは自宅でテレビやネット中継を見ながらスタジアムに声援を届けられる、ヤマハが開発したリモート応援システム「Remote Cheerer」を導入している。こうした無観客テックは現状では実験段階だが、もし、そこでの観戦体験が有料に見合うものになれば、スタジアム・アリーナの座席数という物理的な制限が取り払われる点でビジネス上の期待が大きい。
日経クロステックEXPO 2020の基調講演「無観客テックの未来~新型コロナが促すスポーツビジネスの大変革~」では、スポーツビジネス界から3人のキーパーソンに登壇頂く。2023年に開業予定の新球場建設構想などに携わっている北海道日本ハムファイターズ取締役の前沢賢氏、Bリーグ成功の立役者の1人でZERO-ONE代表取締役の葦原一正氏、ファンや業界から高い評価を受けるMazda Zoom-Zoom スタジアム広島の設計などを担当したスポーツファシリティ研究所代表取締役の上林功氏である。パネルディスカッションでは、「アフターコロナ時代のプロスポーツ界のビジネスモデル変革」「無観客テックの現在と今後の発展や課題」「収益化の可能性」などについて議論する。スポーツ業界のみならず、音楽や演劇などエンターテインメント業界の関係者にも、ぜひご参加いただきたい。

2020/10/16 (金) 10:00 ~ 11:00
北海道日本ハムファイターズ 取締役 ファイターズ スポーツ&エンターテイメント 取締役 事業統轄本部長
前沢賢 氏
ZERO-ONE 代表取締役
葦原一正 氏
追手門学院大学 社会学部社会学科スポーツ文化学専攻 准教授 スポーツファシリティ研究所 代表取締役
上林 功 氏
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