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 現状を正しく把握するには「データ」が重要である。今さらそんな当たり前のことを言われても、と感じるかもしれない。技術に関わる仕事をしている人ならなおさらそう思われるだろう。

 しかし現実には、データを基に正しく世界の状況を理解できている人は驚くほど少ない。賢い人ほど、とんでもない勘違いをしていることがある――。そんな実態を浮き彫りにしつつ、世界の正しい見方を紹介した書籍が『FACTFULNESS(ファクトフルネス)』(ハンス・ロスリング、オーラ・ロスリング、アンナ・ロスリング・ロンランド著、日経BP発行)だ。累計90万部を超えるヒットとなっている。

 ファクトフルネスとは、「データや事実にもとづき、世界を読み解く習慣」のこと。同書は、ファクトフルネスが身に付いているかをチェックするクイズをいくつも掲載している。その1つが以下だ。

問題:世界の1歳児で、なんらかの予防接種を受けている子供はどのくらいいる?
 (A)20%
 (B)50%
 (C)80%

 正解はここではあえて記さないが、著者らがこのクイズをさまざまな国のさまざまな人に出題したところ、正解率は平均でわずか13%だったという。「世界は分断されている」などの複数の思い込みによって、多くの人が誤った理解をしているというのだ。

 「誤った知識を持った政治家や政治立案者が世界の問題を解決できるはずがない。世界を逆さまにとらえている経営者に、正しい経営判断ができるはずがない。世界のことを何も知らない人たちが、世界のどの問題を心配すべきかに気づけるはずがない」。ハンス・ロスリング氏は同書でこう語っている。公衆衛生学者だった同氏の言葉の重みは、新型コロナ禍に世界が見舞われる今、一層増しているといえるだろう。

 日経クロステック EXPO 2020の基調講演には、同書の翻訳を手掛けた人気翻訳家、関美和氏が登壇する。ファクトフルネスのエッセンスを紹介しながら、なぜこの本が日本でヒットしたのか、世界を「ありのままに」見るにはどうしたらよいかを翻訳者の視点から語ってくれる予定だ。先ほどのクイズの答えも、講演の中で明かされるかもしれない。混迷が深まる世界といかに向き合うか、それを考える全ての人にとって示唆に富む講演になるだろう。