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 理化学研究所と富士通が共同開発したスーパーコンピューター「富岳(ふがく)」の本格運用が2021年に始まる。スパコンのランキング「TOP500」で4冠を獲得した富岳だが、その性能がいよいよ世に解き放たれる。

 富岳が期待されているのは、単にハードウエア性能が高いからだけではない。理研は前世代のスパコン「京(けい)」の用途が広がらなかった反省を踏まえて、富岳においてはアプリケーション開発のしやすさを念頭に置いた「アプリケーションファースト」の設計思想を採用。プロセッサーの「A64FX」にArmの命令セットアーキテクチャーを採用したほか、OSには「Red Hat Enterprise Linux(RHEL)8」を採用するなど、ソフトウエア開発者にとって使いやすい環境を用意した。

 日経クロステック EXPO 2020には、富岳の開発を主導した理研・計算科学研究センターの松岡聡センター長が基調講演に登壇。「Society5.0」をはじめとする様々な社会課題を解決するアプリケーションが、富岳を使ってどのように生まれてくるのかを語っていただく。

 富岳はTOP500のLINPACK演算性能に加えて、自動車や飛行機の空力設計など産業用アプリケーションの性能を測る指標である「HPCG」、大規模なグラフ構造を解析する性能を測る指標である「Graph500」、深層学習(ディープラーニング)の性能を測る指標である「HPL-AI」という4個の指標で世界一の座を獲得した。なぜ富岳は幅広い性能指標で良好な結果を残せたのか。そして富岳のそのような特長が、アプリケーション開発のしやすさにどう生きてくるのかを松岡センター長が講演で明らかにする。実アプリケーションの性能にこだわる産業界こそ、スパコンに注目すべき時代がやって来たことが実感できるだろう。

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