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 近年、進化の目覚ましい中大規模木造建築をリードするのがマウントフジアーキテクツスタジオを共同主宰する原田真宏氏と原田麻魚氏だ。数多くの木造建築を手掛け、常に新しい空間を創出してきた両氏に最近の取り組みを聞いた。

「ROOFLAG賃貸住宅未来展示場」(2020年)では、大判のCLT(直交集成板)を梁(はり)として使い、最大で約60mスパンの大架構を実現しています。

原田真宏 大断面材を初めて梁に使ったのは「立山の家」(16年)です。近年、大断面の集成材も一般化して、高さが2mを超える部材でも入手しやすくなってきました。従来の「線材」ではなく、「面材」として使うことができ、重力方向に対して限りなく剛に近い接合で木の架構を組むことが可能です。

マウントフジアーキテクツスタジオの共同主宰者である原田真宏氏(右)と原田麻魚氏(左)(写真:Levi Cannon)
マウントフジアーキテクツスタジオの共同主宰者である原田真宏氏(右)と原田麻魚氏(左)(写真:Levi Cannon)
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 それを実現したのが立山の家です。鉄筋コンクリート(RC)造の壁を並べた上に、梁せい2.1mの大断面集成材を井桁状に組んで載せた構成ですが、RC造と木造は軸を共有していません。大断面集成材の架構だけで剛性を確保できるので、RC造の軸とそろえる必要がない。構造的な軸にとらわれず、それぞれの秩序でつくっています。

 木造で限りなく剛に近い接合ができると気づいたとき、「新しい空間に向かって動いていける」という実感がありました。大学に入ると、最初に「木造は上から下まで軸が通っていなければならない」と教わります。ところが、大断面の一般集成材が登場してきたことで、そうした木造のルールから自由になれる時代が来たのです。

富山県滑川市に2016 年に完成した「立山の家」。高さ2.1mの大断面集成材で剛性の高い格子状の架構を構築。下層のRC造の軸にとらわれないスパンで木の架構を載せた(写真:浅田 美浩)
富山県滑川市に2016 年に完成した「立山の家」。高さ2.1mの大断面集成材で剛性の高い格子状の架構を構築。下層のRC造の軸にとらわれないスパンで木の架構を載せた(写真:浅田 美浩)
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大断面材で接合は苦でなくなる

大断面集成材を大判のCLTに替え、さらに大きな架構へと発展させたのがROOFLAGですね。

原田真宏 ROOFLAGでは高さ(梁せい)2.3m、厚さ270mmと210mmのCLTを使って大スパンの架構を組みました。これだけ大きい断面のCLTを使うと、大スパンが可能になるだけでなく、木造のネックだった部材同士の接合も苦ではなくなります。

 木造の場合、運搬上の制約から部材の寸法が限られます。通常の運搬で運べる長さは12m以内です。そのため大スパンの空間をつくるには接合方法を工夫しなければなりません。そのとき、木材が「線」だと、接合は「点」になり、様々な制約や苦労が発生します。ところが、接合部を「面」で扱える大断面材ならば、接合が長さを持った「線」になります。ほとんど剛に近い形で部材をつないでいけるので、接合が苦ではなくなるのです。このことは大断面材を使う大きなメリットです。

「ROOFLAG賃貸住宅未来展示場」。東京都江東区に2020年6月にオープンした大東建託の賃貸住宅展示場。CLT梁を格子状に組んだ架構は、最大スパンが56.5m(写真:安川 千秋)
「ROOFLAG賃貸住宅未来展示場」。東京都江東区に2020年6月にオープンした大東建託の賃貸住宅展示場。CLT梁を格子状に組んだ架構は、最大スパンが56.5m(写真:安川 千秋)
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