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 木造では、地場産材をただ使うのではなく、地域の産業や技術とともにある建築をつくることを目指すNAP建築設計事務所代表の中村拓志氏。その考えから、木を巡るストーリー性が豊かで、独特の架構を持つ建築が生まれる。丸太材を無駄なく使う、家具の製作技術を生かして、細い垂木からなる繊細な架構をつくるなど、テーマは様々だ。

徳島県の「上勝町(かみかつちょう)ゼロ・ウェイストセンター」は地場産のスギ、広島県尾道市の「エレテギア キッチン&ダイニング」は地場産のアカマツを用いた架構ですね。

 その地域の木材を使うことが大事だと思っています。地域の個性を生かし、地域の産業とともにある建築をつくりたいからです。地域の木材を使うと、利用者が建物に愛着を持ってくれますし、流通エネルギーなどの抑制にもつながります。

 住宅でも地域の木材を使うことは多いですね。それが可能なときは、こちらからいつも建て主に提案しており、反対されることはありません。

NAP建築設計事務所代表の中村拓志氏(写真:日経アーキテクチュア)
NAP建築設計事務所代表の中村拓志氏(写真:日経アーキテクチュア)
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地域の木材をただ使うだけではなく、上勝と尾道では創意工夫のある架構を生み出しました。

 設計に取り掛かる前に、両方のプロジェクトで協働した構造設計者の山田憲明さんと一緒に、建設地の近くにどんな製材所や集成材の加工場があるのか、また乾燥機はどれくらいの長さや太さまで対応するのかなどを調べました。

「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」。国内の自治体として初めて「ゼロ・ウェイスト(ごみゼロ)」宣言をした徳島県上勝町。同町のごみステーションの建て替えにより、2020年3月に竣工した。構造材に丸太材を無駄なく使う(写真:生田 将人)
「上勝町ゼロ・ウェイストセンター」。国内の自治体として初めて「ゼロ・ウェイスト(ごみゼロ)」宣言をした徳島県上勝町。同町のごみステーションの建て替えにより、2020年3月に竣工した。構造材に丸太材を無駄なく使う(写真:生田 将人)
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ごみを出さない木の使い方

上勝町ゼロ・ウェイストセンターで、構造材のスギを丸太に近い状態で用いたのはなぜですか。

 上勝町は「ゼロ・ウェイスト(ごみゼロ)」を推進する町なので、設計行為もその観点から見直し、とにかくごみを出さないようにしたいと考えました。製材では、丸太から柱などの構造材を取り、残った部分は垂木などに有効利用していますが、それでもたくさんのごみが出ます。

 丸太をそのまま使えば、角材より強度が高いし、手で触れた感じも柔らかい。なにより形状がそれぞれ違うので、人をリラックスさせ、自然との対話を生む効果もあります。

 ただし、丸太は仕口の加工に手間がかかります。そこで上勝町ゼロ・ウェイストセンターでは、太鼓材と半割り材を1本のボルトで締めるという形にしました。最小限の加工、かつ最小限の接合です。

 この接合方法なら、解体時もボルトを外せば、製材して再び柱などに使う、つまりリユースすることができます。また、太鼓材の両側の端材は、ひき板として内外装に使い、そのひき板をつくるときに出た端材はホテルで使うまきにして、余すところなく使い切りました。

上勝町ゼロ・ウェイストセンターは、ごみの分別・保管・再生を行う場所を順に連ねている。丸太材を利用した架構が特徴的(写真:生田 将人)
上勝町ゼロ・ウェイストセンターは、ごみの分別・保管・再生を行う場所を順に連ねている。丸太材を利用した架構が特徴的(写真:生田 将人)
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 木は1本1本、個性があるから面白いわけですが、人間は自分たちが扱いやすいように木を製材する。僕たちは、自然というものに人間のほうが合わせるやり方で、これまでも建物をつくってきました。そのようにしてできた建物では、環境共生や自然を敬うような、今の時代に必要な感性が育まれると思うからです。

 ゼロ・ウェイストセンターの構造材には、白いシミのようなものがたくさんあるでしょう? これらは重機が木材をつかんだ爪痕を補修したものです。爪痕は普通、製材時に削り落とされます。初めは僕たちも嫌だなと思っていたのですが、これも1つの表情だ、と思い直しました。樹皮が削れて白太の地肌が見えているような感じですが、あえてきれいにせず、そのままを愛する、受け入れる。ゼロ・ウェイストのために、自分の感性を更新するという行為がそこにはありました。