高知を拠点に設計活動を続ける艸(そう)建築工房代表取締役所長の横畠康氏。「地方で可能な中大規模木造」というテーマを掲げ、CLT(直交集成板)を用いた設計に数多く取り組む。その実現のための手段として、「大工の技」と「CLTの大判遣い」に活路を見いだす。
艸建築工房では、CLTを使った建物を数多く設計していますね。
現在、施工中のものを含めると、これまでに9棟を設計しています。CLTを使うことにこだわっているわけではありません。ただ、強軸・弱軸の2方向性を持つというCLTの特性を生かすことで、今までなら非木造だった建物を木造にすることができる。それを面白がっているところがあると思います。
CLTのマザーボード(原板)は大判でつくるものなので、大判らしく使うことも意識しています。大判で使えば材料の歩留まりが良く、接合部や部材点数も減らせて合理的です。
また、自分の中では「地方で可能な中大規模木造」というテーマを持っており、CLTの使用はそのための1つの手段でもあります。全国どこでも入手できる建材なので、地元の施工者がつくれるように設計すれば、高知でも中大規模木造を実現できる。現代のスタンダードになり得る建築のつくり方を目指したいのです。
そのため、日本の在来木造の要素をCLTに置き換えるとどうなるか、と考えながらいつも取り組んでいます。とはいえ、中大規模木造では従来の施工概念を飛び越えるような手順やつくり方になることも多い。施工者には新たなスタンダードに一緒に取り組もうという気概も必要です。
高知は森林県で、木造建築の文化やチャレンジ精神の伝統が今も息づき、ベテランの設計者や職人などの生きたテキストに恵まれています。この環境はありがたいですね。
長さ12mのCLTを3層通しで
「高知学園大学」の木造3階建て校舎では、長方形平面の短辺方向の壁面に長さ約12mのCLTを3層通しで使う一方、長辺方向は軸組み工法です。
大スパンの実習室を求められたことが、CLTを使おうと思った始まりです。9.4m×22mの無柱空間をつくるには、水平剛性を負担する部材が必要です。CLTを大判で使えば、少ない継ぎ手で水平剛性を高めたうえで、水平力を耐力壁に伝達することができると考えました。
CLTは最大3m×12mのサイズまで国内で製造可能です。3階建てなら高さがちょうど12mくらいになるので、長方形平面の短辺方向の耐力壁に3層通しで使いました。厚さ150mmのパネルを2枚、現場で張り合わせています。幅は床面に使ったCLTを含めて、トラックの荷台の内側に平積みできるように、2.2mにしました。
長方形平面の長辺方向となる北側をガラス張りにしたのは、実習室や教室に外光を採り入れるためと、周囲の住宅街に対して校舎の顔をつくるためです。柱や筋交いの外側にガラス面を設け、柱上部の大きな梁(はり)が外から直接見えないようにするのと同時に、CLTの床を持ち出して庇(ひさし)にしました。この庇はCLTを強軸方向に延ばした形なので、通常の庇をつくるような作業手間がかかりません。