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 現在、国内で製造できるCLT(直交集成板)は最大で幅3m、長さ12m。CLTならではの大判部材の活用に挑んだのがこの銘建工業本社事務所だ。気の合った意匠と構造の設計チームが、集成材の架構と組み合わせることで開放的な空間を生み出した。CLTを用いた建築が断熱や気密といった環境性能を確保しやすいことも示そうとした。

 南面を全面ガラスで覆った斜め格子のファサードに、5つの山を描いて折板(せつばん)屋根が載る。屋根を構成するのは、幅3m、長さ12mの大判のCLTだ。現時点で、国内で製造できる最大寸法のCLTを使っている。

 CLTを直角に接合した折板屋根と同調したスパン割りの斜め格子は、一辺が約2.7mの正方形が基本形。2階床の荷重を受ける下層部分は、格子の割り付けを細かくして強化している。

構造のベースとなるブレース架構が現れた南側のファサード。屋根に用いた幅3mのCLTのサイズを基に割り付けられている。2階床を支えるV形梁を支持する箇所から下は、ブレースのスパンを半分にしている(写真:銘建工業)
構造のベースとなるブレース架構が現れた南側のファサード。屋根に用いた幅3mのCLTのサイズを基に割り付けられている。2階床を支えるV形梁を支持する箇所から下は、ブレースのスパンを半分にしている(写真:銘建工業)
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国道に面して5つの折板屋根が並ぶ南面の全景。折板屋根は、国内で製造できる最大寸法の幅3m、長さ12mのスギのCLTで構成している。厚さは120mm。CLTを持ち出した軒の深さは約1.5m(写真:銘建工業)
国道に面して5つの折板屋根が並ぶ南面の全景。折板屋根は、国内で製造できる最大寸法の幅3m、長さ12mのスギのCLTで構成している。厚さは120mm。CLTを持ち出した軒の深さは約1.5m(写真:銘建工業)
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 この建物は、岡山県真庭市の集成材メーカー、銘建工業の新しい本社事務所。同社が国内トップシェアを占める構造用集成材やCLTを駆使した建物だ。木造2階建てで、延べ面積は約990m2。2020年1月から約60人の社員がこの新しいオフィスで働いている。

大判CLTの活用が条件

 「銘建工業で製造できる最大寸法のCLTを、折板構造で生かす方向で設計案を練った」。設計を手掛けたNKSアーキテクツ(福岡市)取締役の末廣宣子氏はそう話す。この建物は、意匠設計の同社と、構造設計の桃李舎(大阪市)が設計チームを組んで進めた。「CLTを折板で使うと、水平に架けるよりも薄くできる。数年前、初めてCLTを使って水平の屋根を架けた際、次は折板構造で設計したいと思った」。そう振り返る桃李舎代表の桝田洋子氏がNKSアーキテクツに声を掛けて今回の設計チームを編成した。

 この建物は、日本CLT協会が17年に実施した「CLTデザインコンペ2017」の事務所部門で最優秀賞を受賞した提案を具現化したものだ。応募条件の1つが、意匠と構造の設計チームによる参加だった。

 「他の材料や構造システムの置き換えではなく、CLTならではの新しいデザインの開拓を目的にコンペで提案を求めた」。建て主としてプロジェクトを取りまとめた銘建工業総務人事部長の中島洋氏はそう説明する。コンペの審査では、同社の工場で生産できる国内最大の大判CLTを生かすことや、高い環境性能を確保することなども重視したという。