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 2020年9月14日午後3時過ぎ、菅義偉官房長官が自民党の新総裁に就任した。菅氏は16日に発足する新政権での注力分野の1つにデジタル政策を掲げる。今総裁選も特に主張したのが、携帯電話料金のさらなる引き下げだった。

自民党の新総裁に選ばれた菅義偉氏
自民党の新総裁に選ばれた菅義偉氏
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 官房長官会見や公開討論などでは携帯電話大手3社の料金値下げが不十分だと繰り返し発言してきた。携帯大手3社は最大4割の値下げを実現した新料金プランを既に提供済みという立場を取る。

 しかし菅氏は「(現状から)4割は下げられる」「公共の電波を使う携帯大手3社が20パーセントもの売上高利益率に達しているのは極めて異常」と発言するなどして取り合わず、大手3社にさらなる値下げを迫っている。

「縦割り打破」で改革断行

 菅氏が定めた次なるターゲットも見えてきた。民放番組での討論で「必要」と発言した「大容量プランの値下げ」だ。

 各社が以前より値下げ幅を大きくした「ライトプラン」ではなく、容量が50ギガバイトかそれ以上で月額基本料金が7000~8000円台などの大容量プランについて、値下げが不十分としてメスを入れたいようだ。料金が下がらない場合、「電波使用料の値上げも検討する」とまで発言している。

 「政治は結果責任」を信条とする菅氏は、ふるさと納税や災害時のダム活用の見直しなどを自らの成果だと強調する。いずれも官僚の反対を押し切り、行政の縦割りを打破して実現させた政策だと胸を張る。

 その「菅流」で携帯電話料金に切り込めば、さらなる値下げは可能かもしれない。しかし2年にわたるこれまでの手法を振り返ると、論拠が不足したまま民業に介入するなど、官邸が暴走する危うさも同時にはらんでいる。

「違約金1000円以下は私が実現させた」

 菅氏には、官僚を押し切って携帯電話の料金規制を大きく改革した「成功体験」がある。2019年10月に施行された、「2年縛り」契約を途中解約する際に生じる違約金を従来の9500円から1000円以下に引き下げた「新ルール」だ。

 総務省がまとめていた原案を手ぬるいとして、官邸主導で引き下げさた張本人が菅氏だった。今総裁選中に「私が引き下げた」と菅氏自らも認めている。

総務省調査による主要都市の携帯電話料金。シェア1位の事業者を比較した。日本(東京)はニューヨーク市と並んで最も高い水準という
総務省調査による主要都市の携帯電話料金。シェア1位の事業者を比較した。日本(東京)はニューヨーク市と並んで最も高い水準という
(出所:総務省)
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 違約金を巡っては、総務省は複数回の有識者会合で議論を煮詰め、2019年5月ごろに違約金を1カ月分の通信料金などを目安に2000~4000円程度に引き下げる原案を固めていた。

 民業の根幹であり自由化された通信料金に規制を加えるには十分な論拠が必要になる。そこで総務省は経済学者ら有識者の知恵を借り、雑誌や通販の定期購入など他の類型サービスと比較する手法などを論拠に、妥当な違約金の水準を導いていた。

 しかし原案の報告を受けた菅氏は首を縦に振らなかった。