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 2020年9月14日の自民党総裁選に圧勝した菅義偉官房長官はデジタル化政策の中心にマイナンバーカード(個人番号カード)の普及を位置づけている。菅氏はカードの普及に向けて全国の自治体も巻き込んで号令をかけてきた。新政権でも引き続き普及に注力するとみられる。

自民党新総裁となった菅義偉氏
自民党新総裁となった菅義偉氏
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 振り返れば、菅氏は2019年2月にマイナンバーカードの普及やマイナンバーの活用に向けたタスクフォースを政府に肝煎りで発足させた。この「号令」により、それまで内閣官房や内閣府、総務省、厚生労働省といった府省庁が個別に進めてきたマイナンバーカードの普及やマイナンバーの活用について、政府一丸となって検討する体制に引き上げた。

 マイナンバー制度に関わってきた政府関係者は「これまでクイーンやキングといった手札で戦ってきたのに、突然ジョーカーやエースがいっぺんにそろったようだった」と振り返る。当初は「官房長官の威光がどこまで各府省を動かせるのか」といぶかる声もあった。しかし菅氏の号令を受けて状況は一変。「政府の最重要課題になった」と話す政府関係者もいた。

「2023年3月末にほとんどの住民がカードを保有」と掲げる

 政府の変化を象徴するのが、2019年9月に政府が初めてまとめたマイナンバーカードの想定交付枚数である。菅氏が議長を務めるデジタル・ガバメント閣僚会議でマイナンバーカードについて「2023年3月末にほとんどの住民がカードを保有する」という目標を公表した。

 それまで政府はマイナンバーカードの具体的な普及目標を掲げてこなかった。菅氏は同会議で「日常生活のあらゆる場面で行政に関わる手続きの電子化を可能とし、国民生活の利便性を高めるもの」として、マイナンバーカードの普及を訴えた。

 これ以降、府省庁はマイナンバーカードの普及策や活用策を次々と打ち出している。総務省は公務員らが加入する健康保険に当たる共済組合に対して、家族も含む被扶養者にもカードの一斉取得を促した。

 さらに総務省は2020年9月に「マイナポイント」を開始した。マイナンバーカードを持っているキャッシュレス決済サービスの利用者に対し、1人当たり2万円までのチャージ(前払い)や買い物の購入額について、政府が最大25パーセントのポイントとなる5000円分を付与する。

 マイナポイントはマイナンバーカードとキャッシュレス決済の普及、消費の拡大を狙った事業だ。政府は2020年度予算にポイント付与の原資などのために2000億円を計上。これまで政府の消費拡大策といえば商品券を配るなどアナログだったが、それをデジタル化するという新たな挑戦である。

総務省「マイナポイント事業」のWebページ
総務省「マイナポイント事業」のWebページ
(出所:総務省)
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 厚労省は2021年3月からマイナンバーカードを健康保険証代わりに使えるようにする。対応する医療機関の受付で、顔認証か4桁の暗証番号で保険証の資格確認ができる見込みだ。

 当初は医療機関や薬局全体の6割程度が導入し、2023年3月末にはおおむね全ての医療機関や薬局が導入するよう目指す。加えてマイナンバー制度の個人向けWebサイト「マイナポータル」上で2021年3月からは特定健康診査(特定健診)の情報を、同年10月からは過去の投薬履歴を確認できるようにもする。

 内閣府はマイナポータルの全面的な見直し作業を進めている。スマートフォンでの使い勝手を高めるという。