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 2020年に入り、にわかに動き始めた「全国銀行データ通信システム(全銀システム)」改革。目玉の1つがノンバンクへの開放である。これまで銀行などに限られてきた同システムへの参加資格を、キャッシュレス事業者などに開放しようとする動きが本格化し始めた。

 どのように全銀システムの開放を進めるのか。方法は大きく3つだ。直接接続、間接接続、新たに構築した決済システムへの参加である。

全銀システムへの接続形態
全銀システムへの接続形態
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 直接接続の場合、ノンバンクは今の銀行と同じ立ち位置になる。中継コンピュータ(RC)と呼ばれるアプライアンス製品を導入して全銀システムと接続。資金決済の最終的な確定を担うため、日本銀行に当座預金を開設する。当座預金間の決済には、「日本銀行金融ネットワークシステム(日銀ネット)」を使う。

 このやり方を採る場合、特段の制約はない一方でキャッシュレス事業者などの負担は大きい。特に重荷になりそうなのが、日銀による考査(日銀考査)。日銀が金融機関の業務や財産の状況を把握するため、立ち入り点検などを実施する。

 システム面の負荷も小さくない。多くのシステムをクラウドベースで構築している新興事業者にとってはなおさらだ。「接続だけで年単位の期間と億単位のコストがかかるのではないか」と、キャッシュレス事業者の担当者は懸念する。

 そこで次の選択肢として浮上してくるのが間接接続だ。全銀システムの直接参加者に決済を委託し、間接的に全銀システムを利用する。これには2つの実現方式が考えられる。

 1つは、既存銀行との提携だ。提携する銀行に対して手数料を支払う必要があるものの、日銀考査やRC導入といった負担を回避できる。先進的な銀行と手を組むのであれば、新興企業が受け入れやすいシステム接続仕様やコストで折り合える可能性もある。

 もう1つはキャッシュレス事業者同士が手を組み、全銀システムと接続するための代表企業を立てる方法だ。今も信用金庫業界は、中央機関である信金中央金庫が代表して接続している。日銀考査やRC導入に係る負担を分担できるといった利点が見込める。

 代表企業方式を取れるかどうかは、ライバル関係にあるキャッシュレス事業者による呉越同舟を実現できるかにかかっている。現時点ではキャッシュレス事業者間の全銀システムへの参加意欲には温度差があるのが実態だ。賛同者が少なければ、割り勘効果は働きにくい。

 全銀システムの開放を進めるもう1つの方法は、重厚長大な全銀システムとは別に低コストの決済システムを構築して、キャッシュレス事業者が接続するというパターンだ。厳密には「開放」ではないが、安価な手数料を実現できればキャッシュレス事業者が抱える振込手数料の問題解決につながる。「成長戦略実行計画」も多頻度小口決済を想定した新たな資金決済システムを検討するとしており、政府の筋書きでもある。

 全銀システム改革の本丸とも言える全国銀行資金決済ネットワーク(全銀ネット)の「次世代資金決済システムに関する検討タスクフォース」は2020年5月の発足以降、ノンバンクへのヒアリングや新たな小口決済システムに関する議論を進めてきた。

 ところが事態は急展開を迎える。8月6日、タスクフォースのメンバーにとって寝耳に水のニュースが舞い込んできたのだ。