コンビニでは年々深刻化する人手不足を解決すべく、ロボットによる商品陳列の試験運用を開始。目指すは店員1人とロボットによる店舗運営だ。飲食店でも新型コロナウイルスの大流行をきっかけに、ロボットの活用が増加。「密」回避と効率化によるコスト削減という2つの効用で苦境打破を図る。
ファミリーマートは東京都豊島区の「ファミリーマートとしまエコミューゼタウン店」で2020年7月30日、遠隔操作でペットボトル飲料を売り場の裏側(バックヤード)で陳列するロボットの試験運用を始めた。ロボット開発のTelexistence(テレイグジスタンス)製の「Model-T」を使用し、テレイグ社の東京・虎ノ門のオフィスで、操縦者がVR(仮想現実)端末を利用して操作している。
「コンビニ店員の作業の3割程度は店舗に届いた商品の陳列や片付け。こうした業務は人に頼っていた」とファミリーマートの狩野智宏広域・大規模法人開発部長は話す。
商品の陳列業務でテレイグ社と協業した決め手は「人型ロボットのため様々な物を持てるほか、避ける動作ができ人と共存しやすい」ことを挙げる。
試験運用ではこの点を含めて検証する。コンビニの店舗はコンパクトだ。1台のロボットで様々な商品を並べられ、かつ、商品の陳列中に客が通路を通る場合は邪魔にならないようにロボットが避けられなければ、コンビニ業務にはなじまない。
2021年春には店頭の売り場で商品を並べる試験運用を実施予定だ。ロボットが陳列する商品もおにぎりなどの冷蔵品、そしてカップラーメンといった常温品などに順次拡大する。「将来的には全商品をロボットが陳列できるようにしたい」(狩野部長)意向だ。
コンビニにはトラックが1日平均8~9台来て商品を運び込む。そのたびにスタッフは陳列をする。「陳列業務がロボットにより自動化できれば、スタッフはその時間を他の作業に振り向けられ、店舗運営のあり方も変わる」と狩野部長は話す。
テレイグ社はファミマのフランチャイジー(加盟店)として店舗を経営し、ロボットを活用するノウハウを蓄積する。2022年までに最大20店舗でロボットの導入を目指している。
課題は商品陳列の速度だ。「人の作業速度と比べると、ロボットの作業は時間がかかる」(狩野部長)。ロボットによる作業のスピードアップに注力し、「近いうちに人間と同等の作業効率まで高めたい」(同)。
遠隔操作のロボットによる商品陳列作業が可能になることを含めた自動化で、店舗に通常2人いるスタッフを1人にしていくことを目指す。自宅などから複数店舗の商品を陳列できるようになれば「何らかの事情があって外に出て働けない人などの雇用創出につながる」と狩野部長は期待する。