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新型コロナ禍の長期化によりテレワークの常態化が進む中、コミュニケーションの促進だけでなく労働力不足の解消のためにも、オフィスで分身(アバター)ロボットを活用する例が広がりそうだ。

 新型コロナウイルス感染対策を機にテレワークの常態化が進む。一方で、オンラインではコミュニケーションがとりにくい、社員同士の雑談が無くなり新しい発想が生まれにくいなどの課題もみえてきた。そこで、リアルオフィスとオンラインの「中間地点」として企業が熱い視線を送るのが、分身(アバター)ロボットのいるオフィスだ。

分身ロボットで「出社」

 「この半年ほど、COO(最高執行責任者)は出社していません」と、オリィ研究所の吉藤健太朗代表取締役CEO(最高経営責任者)は言う。同社の結城明姫共同創設者COOは過去に結核の発症経験があり、新型コロナ感染リスクを避けるため在宅勤務を続けている。結城COOの代わりにオフィスにいるのが、同社が開発した分身ロボット「OriHime(オリヒメ)」だ。高さ23センチメートル、重さ660グラムと机上に置ける小型ロボットで、カメラ、マイク、スピーカーを内蔵。パソコンやスマートフォンの専用アプリなどを使い遠隔地から操作する。

オリィ研究所の分身ロボット「OriHime」
オリィ研究所の分身ロボット「OriHime」
(写真提供:オリィ研究所)
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オリィ研究所のオフィスでは普段からOriHimeを活用し、在宅勤務の社員と出社中の社員がコミュニケーションを取っている
オリィ研究所のオフィスでは普段からOriHimeを活用し、在宅勤務の社員と出社中の社員がコミュニケーションを取っている
(写真提供:オリィ研究所)
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 オリィ研究所では、コロナ以前から難病などで外出困難な人がスタッフとしてOriHimeで「出社」してきた。吉藤CEOの秘書を務める三好史子氏は島根県在住。東京都港区にあるオフィスに来たことはないが、週1~2回ほどOriHimeで「出社」している。社員の出社率は以前から8割程度だったが、新型コロナ対策で約3割まで減った。

 「リアルの場での会議も、出社できない人が分身ロボットを使うことで、存在感や一体感を得られる」と吉藤CEOは言う。用件を伝えるだけのコミュニケーションならばオンライン会議でも問題はないが、チームで一体感を得たり、雑談から新しいアイデアに広げたりすることは、オンライン会議だけでは難しい。そうした対面の会議ならではのメリットを、分身ロボットを使うことで得られるという。

 こうしたテレワークとリアルオフィスを組み合わせた働き方をこれまでも進めてきたオリィ研究所に対し、新しい働き方を模索する企業が注目している。同社は2020年7月7日、外出困難だが分身ロボットを使って働きたい人と、雇用したい企業をマッチングするプロジェクト「AVATAR GUILD(アバターギルド)」を開始した。

 「いま企業は、非対面を含めた新しい働き方を考えないといけないという状況。当社は分身ロボットを使い非対面で働くことに関する知見があるので、コンサルテーションに入ってほしいという要望もある」(吉藤CEO)という。