全2658文字
PR

 菅政権の値下げ圧力が日に日に強まっている。日経BPが発売した書籍「官邸vs携帯大手 値下げを巡る1000日戦争」では、過去1000日にわたる官邸と携帯大手の攻防を描いた。同書から、値下げを巡る攻防の裏側を紹介する。

 「ドコモの新しい料金は、ネット使い放題の『ギガホ』と利用したデータ量に応じて料金が適用される『ギガライト』、この2つだけ。この2つから選ぶ分かりやすいプランにした」ーー。

 NTTドコモの吉沢和弘社長は2019年4月15日、前年10月末に投入を表明していた新料金プランの詳細を発表した。新料金プランの開始は、当初の計画どおり改正法施行前の2019年6月1日とした。

2〜4割値下げした新料金プラン「ギガホ」「ギガライト」を発表するNTTドコモ社長の吉沢和弘氏
[画像のクリックで拡大表示]
2〜4割値下げした新料金プラン「ギガホ」「ギガライト」を発表するNTTドコモ社長の吉沢和弘氏
(写真:日経クロステック)

 新料金プランのギガホとギガライトは、総務省が改正法施行で2019年10月から各社に求める「完全分離」を先取りしたプランとした。吉沢社長の説明の通り、確かにシンプルで分かりやすいプランになっていた。

 ギガライトは利用したデータ量によって4段階の定額プランが自動適用される。1GBまでの利用の場合、月2980円(税別、以下同様)。3GBまでが月3980円、5GBまでが月4980円、7GBまでが月5980円といった具合だ。家族で2回線を契約した場合、月500円引き、3回線を契約した場合は月1000円引きとなり、3回線を契約した場合は月1980円から利用できる。

 大容量の「ギガホ」は、月30GB以降は速度が制限されるが使い放題となる(後にキャンペーンで月60GBに増量)。料金は月6980円であり、同様に家族割引を適用した場合、2回線で月500円引き、3回線で月1000円引きとなる。速度制限がかかっても1Mビット/秒で利用できる。

 従来プランと比較した値下げ幅は、データ通信量ごとに濃淡を付けた。最も値下げ幅を大きくしたのは、月1GBまでのデータ利用のケースだ。こちらは従来プランから4割値下げした。この層の利用者は、同社顧客の4割を占める最大のボリュームゾーンという。続いて値下げ幅が大きいのは、月7GB以上と、1G〜3GBのデータ利用層だ。こちらは3割値下げとした。逆に月3G〜7GBのデータ利用層は2割値下げにとどめた。

他社は「想定内」と安堵(あんど)の表情

 ギガホとギガライトは確かに従来プランから値下げしている。しかし、それはあくまで通信料金だけを比較した場合だ。ギガホとギガライトの導入に伴って同社は月々サポートを廃止した。そのため、端末の実質負担は高まる。利用者は端末の買い替えと料金プランの変更を同時に進めるケースが多く、通信料金と端末代金を合算した場合、最大4割値下げとはならない。

 NTTドコモは苦肉の策として、ハイエンドスマホを中心に端末を36回の分割払いとし、24回分を支払ったあとに端末を返却すれば、12回分の残債を免除するという端末購入プログラムを用意した。顧客を過度に囲い込むとして総務省や公正取引委員会から是正を求められていたKDDIやソフトバンクの「4年縛り」と比べ、囲い込みの条件は緩く、過度な端末割引も抑えた。しかし端末の実質負担が半額以下になることが珍しくない月々サポートによる端末割引と比べ、新たな端末購入プログラムは最大3割程度の割引にとどまった。NTTドコモはスマホ本体の粗利を削り、本体価格そのものを安くし、利用者がリーズナブルに端末を購入できるように力を尽くした。それでも従来と比べた端末価格の値上がり感は拭えなかった。